ジョー・バイデン米大統領は9月21日午前(米国東部時間)、第77回国連総会で一般討論演説を行った。ロシアのウクライナ侵略について「国連安全保障理事会常任理事国が隣国を侵略して地図から主権国家を消し去ろうとした」と激烈な批判をした。
と同時に、ウクライナ東部・南部で23~27日にロシア編入に向けた親露派による住民投票を強行することについても、「国連憲章の極めて重大な違反だ」と指摘した。バイデン氏は19日のエリザベス英女王の国葬前日夕に米CBSテレビの看板番組「60ミニッツ」に出演し、中国に対し極めて厳しいメッセージを発していたのだ。 スコット・ペリー記者の「米軍は台湾を守るのか」との質問に対し、「Yes。もし実際に前例のない攻撃があった場合は」と即答した。
さらに「つまりウクライナと違って、中国の侵攻があれば、米軍兵士は台湾を守るのですか」と畳みかけた質問にも「Yes」を繰り返したのである。バイデン氏はもちろん、同インタビューの前段で「一つの中国政策に変わりはない」と述べている。だが今回の「軍事介入あり得る」発言は、米軍最高司令官として独自の見解を示すものである。▶︎
▶︎米国では宣戦布告は米議会上院の承認が必要だが、戦争の決断は大統領に委ねられている。法律上の規制はない。したがって、バイデン発言は「政策の変更」ではなく「姿勢の変更」を示唆しているのだ。
なぜ、バイデン氏は現下の台湾海峡危機でさらに一歩踏み込んだのか。同氏はロシアによるウクライナ侵攻前に、軍事介入しないと発言したことがウラジーミル・プーチン大統領の背中を押したとの“罪悪感”を拭えないのではないか。だからこそ、今回は明確に習近平国家主席(共産党総書記)へのメッセージとして「Yes」を繰り返したのだ。では、こうしたバイデン氏発言に日本はどうコミットするのか。昨年4月の菅(義偉首相)・バイデン会談後に発表された共同声明には「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」と記された。
今年5月の岸田・バイデン会談による声明文の冒頭に「不可欠な要素である」が書き足された。この格上げが軍事介入を意味するとまで言わないが、日米連携の台湾コミットメントの証しだ。気になるのは、21日午後のバイデン・岸田会談は僅か5分の立ち話だったが、その直後のカナダのトルドー首相とは正式会談していることだ。この「格差」は何なのか。