No.661 9月25日号 ツキが落ちた岸田文雄の「熱量」

ほんの2カ月前までは,本誌を含め永田町ウォッチャーの多くが岸田文雄首相はついていると指摘していた。事実,安倍晋三元首相銃撃殺害事件出来による政治・社会的混乱が冷めやらぬ7月中旬,岸田に面と向かって「失礼ながら申し上げますが,総理には運がありますね」と述べたメディア関係者がいた。首相は一拍置いて「うん,そうだね」と答えたと聞く。同下旬の雑誌寄稿文の冒頭に「岸田文雄首相はついている――。
ツキが間断なく続いている。不謹慎な言い方でお叱りを受けるかもしれないが,つくづくそう思う」と筆者は書いている。あの頃のツキは一体どこへ行ってしまったのか。それとも,岸田にはもともとツキなどなかったのか。いずれにしても最近の首相は運から見放されたかのように見える。
8月以降の首相動向をトレースしてみる。同1日,米ニューヨークの国連本部で開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議で演説した。これまで披瀝したことがない流暢な英語での演説は好評を博した。その勢いを駆って同27~28日にチュニジア・チェニスで開催される第8回アフリカ開発会議(TICAD)での基調演説に臨むはずだった岸田は新型コロナウイルスに感染し,出席を断念した。これが躓きの号砲となった。▶︎

▶︎先立つ10日に断行した内閣改造・自民党役員人事は,当初の9月初旬説を覆す「スピード人事」とされたが,世界平和統一家庭連合(旧統一教会)から選挙での支援や寄付を受けていた自民党国会議員続出に歯止めがかからず,「関係を絶つ」(8月31日の首相言明)どころか今や底なし沼である。続投を果たした山際大志郎経済再生相は改造直前と改造後の同教会との説明の矛盾を衝かれて火だるま状態にある。9月に入るや27日に執り行われる「故・安倍晋三国葬儀」の賛否論議がSNS(交流サイト)を中心に活発となり,当初の「安倍ファン」と「安倍嫌い」共にノーサイドで国葬容認ムードが吹き飛んでしまった。実際,直近の共同通信社世論調査(17~18日実施)で国葬に「反対」「どちらかといえば反対」が計60.8%となり,「賛成」「どちらかといえば賛成」の計38.5%を大きく上回っている。
狙撃犯・山上徹也容疑者の“旧統一教会憎し”の影響は否めない。加えてウクライナ戦争の膠着・長期化によるエネルギー価格高騰や円安などから物価上昇は止まらず,首相の物価高対応についても「評価しない」が70.5%に達した。不運は続く。8日のエリザベス英女王逝去によって英国葬が19日に実施されたこともあり,8日後の安倍国葬首脳級参列者のランクダウンの憂き目に遭った。岸田の第77回国連総会出席についても,当初出発予定の19日を大型台風14号の九州直撃によって出発を1日延期したことからニューヨーク滞在日程の変更を余儀なくされた。ジョー・バイデン米大統領とは会談できず,超短時間の「懇談」に終わった…(以下は本誌掲載)申込はこちら