10月15日付 リーマン・ショックより遥かに深刻…米国株の「弱気相場」で日本の円安が益々止まらない

 9月末、米欧の主要証券会社は一様に米国を中心に株式の先行き見通しを大幅に引き下げた――。日本経済新聞(10月5日付朝刊)によると米最大手のゴールドマン・サクッスは9月26日、今後3カ月の世界の株式の投資判断を「ニュートラル(中立)」から「アンダーウエート(弱気)」に引き下げたというのである。これに先駆けて22日にはS&P500種株価指数(米国株式市場の動向を示す株価指数)の年末予想値を従来の4300から3600に大幅に引き下げていた。クレディ・スイス証券も同23日に3500に引き下げている。要するに米国株の見通しが軒並み「弱気」に転じたというのである。そのような中で、米大手銀行の株価が年初来安値圏に沈んだままであることが際立つ。バイデン政権発足以降、厳しくなる一方の資本規制の影響が大きいとされる。具体的には大手銀行に課せられる中核的な自己資本比率問題である。
例えば最大手のJPモルガン・チェースは10月から12%の縛りを掛けられた。危機感を抱くJPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は9月21日、米下院金融サービス委員会(マキシン・ウォーターズ委員長=民主党)が開いた公聴会で「規制自体が重大な経済リスクになっている」「これは米国にとって悪いことだ」と訴えた。このニュースに接した筆者が思い出したのは、JPモルガンの極めて珍しい新聞広告である。手元に残していた日経新聞(7月4日付朝刊)44面(文化面)の3分1を占める広告で、紙面には「J.P.Morgan ASSET MANAGEMENT  J.P.モルガンが厳選 “米国スター・プレイヤー” JPモルガン・アメリカ成長株ファンド 愛称:アメリカの星」というキャッチコピーが躍っていた。米国株推奨の新聞広告である。
しかもそれは1回だけではなかった。同22日付のクリッピング(同じサイズで、同じ文言)も残っている。記憶にある限り、JPモルガンはトータルで4、5回広告を出稿しているはずだ。同紙44面最終頁には今や人気沸騰の安部龍太郎の「ふりさけ見れば」が連載中なので、多くの読者の目に留まったのは間違いない。日経読者をターゲットにした米国株推奨は理に適っている。▶︎ 

 ▶︎CEOのダイモン氏は日経新聞に広告を大々的に掲載する前の今春過ぎ頃、秋の良き日に日本を訪れて東京で米国株推奨の大イベント開催を準備していた。
ところがその目論見は潰えた。7~9月の世界の株式市場は米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めによって米国株はもとより世界株の全面安を招き、急きょ中止を余儀なくされたのだ。事実、ダイモン氏は10月10日の米CNBCのインタビューで「米国や世界は今から6~9カ月後に景気後退に追い込まれる可能性がある」と述べ、改めて危機感を表明した。奇しくも同11日に公表された国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し(World Economic Outlook October 2022)」(年2回発行)は23年の成長率見通しを22年当初予測の3.2%から2.7%へ下方修正し、米国と欧州、中国の経済を「失速」と表現した(ちなみに同見通しの前段に「the United States, the European Union, and China‐will continue to stall.」と記述されている)。世界は今、相次ぐ各国の利上げによる景気後退リスクにさらされている。米株式市場のNYダウ平均は3万㌦割れとなり、東京株式市場の日経平均株価も2万7000円を割り込み2万6000円台で乱高下している。2008年9月のリーマン危機時より遥かに深刻だ。加えて13日の東京外国為替市場で対ドル円レートが147円台後半に下落し、32年ぶりの円安・ドル高水準を更新した。9月22日に政府・日銀が実施した円買い・ドル売りの為替介入(約2.8兆円)直前の145円90銭を突破、今なお円売り・ドル買いが加速している。岸田文雄首相が謳った「円安メリットを活かす」どころか、経済界は円安進行に強い不安感を覚え始めた。
すなわち、日本経済の「失速」(stall)も現実味を帯びて来ているのだ。臨時国会開催中の今、岸田政権は物価高騰を受けて速やかな総合経済対策が求められている。自民党内では30兆円規模の補正予算案を作成すべきだ、最低でも15兆円は必要だ、などの声が上がっている。ところが、現時点で肝心な岸田氏から経済対策予算の総額すら指示が下りていないという。どうやら財務省、経済産業省、内閣府など所管官庁と首相官邸の連携を担う司令塔の不在なのか、「チーム岸田」が従前ほど機能しなくなったのか、いずれにしても首相のリーダーシップそのものに問題があるのではないか。