No.663 10月25日号 果して「我のみぞ知る」で良いのか

 10月21日午前10時半過ぎ(米国東部時間・日本時間同午後11時半頃),外国為替市場で円相場が1㌦=151円90銭台まで下落し,政府・日本銀行は直ちに円買い・ドル売りの為替再介入に踏み切った――。財務省の執行責任者である神田眞人財務官は22日未明,記者団に「介入の有無についてはコメントしかねる」と語った。
一方,事前に神田から介入実施の報告を受けていた岸田文雄首相もオーストラリア西部パースでアンソニー・アルバニージー首相と会談後の22日午後(豪州現地との時差は日本が1時間早い),同行記者団に対し「(介入に関しては)具体的なコメントはいたしません」と述べた。政府・日銀による為替介入の事実を明かさない「覆面介入」である。9月22日の2.8兆円の円買い介入に続く今回の通貨当局による5.5兆円追加介入で円相場は7円急騰し151円台から144円まで円高に戻した。と書いてきたところ,週明け24日朝に円安が加速したことを受けて再々介入したとの速報が入った。
いずれにしても,円安トレンドに変わりはない。ここで僭越ながら指摘しておくべきは,金融についての報道各社の取材・分析力の希薄さである。過去と直近の為替介入と比べると,近年のコンプライアンス規制がアナウンス効果の影響を与えていることに気付いているメディアが皆無に近いと言っていい。近年は情報管理が徹底しているため,介入の実態が把握し難い。そのため財務官は,介入実施の事実を広めたい時に記者対応をするのである。▶︎

▶︎まさに9月22日がそれだった。金融当局がなぜ「会見」を開くのかという根本的な背景を疑問視すべきなのだ。
さて問題は,32年ぶりの円安・ドル高に直面する現在,果たして《日本株は海外の景気減速の逆風を受けるが,円安による収益押し上げ効果から底堅く推移するとの予想が目立つ》(日本経済新聞22日付朝刊)と言えるのかである。看過できないのは現下の物価高である。総務省が21日発表した9月の全国消費者物価指数は,2020年度を100とすると生鮮食品を除く総合で102.9となり,前年同月比3.0%上昇した。31年ぶりの物価上昇率であり,13カ月連続の上昇である。自民党の萩生田光一政調会長は18日午後,岸田首相に「新たな総合経済対策に向けた提言」を提出した。同提言にある(難局の克服に向けて)に掲げられた4つの課題の第1は「物価高騰の克服」である(因みに第2は「円安への対応」,第3が「構造的な賃上げと成長のための投資・改革の実現」,第4は「国民の安全・安心の確保」)。
そこには《具体的には,物価高騰の要因の大宗がエネルギーと食料品にあることを踏まえ,日常生活や事業活動に困難をきたしている方々に更なる支援を行うべきである。特に,電気料金の高騰は,家計にとっても事業にとっても極めて切実な問題であり,負担軽減は物価対策の一丁目一番地ともいえる。「実感こそが安心につながる」という考えのもと,来年春の大幅な値上げも見越して前例にとらわれない思い切った対策を講じるべきである》と記述されている…(以下は本誌掲載)申込はこちら