北朝鮮は11月3日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含む弾道ミサイル6発を発射した。前日のミサイル乱射20発に続くものだった。3日前の10月31日、内閣官房副長官補室は20日夕に首相官邸で開かれた第2回「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」(座長・佐々江賢一郎日本国際問題研究所理事長)の議事要旨を公表した。同有識者会議には政府から岸田文雄首相、林芳正外相、浜田靖一防衛相、西村康稔経済産業相ら国家安全保障会議(NSC)メンバーが出席した。
なぜ今、ここで取り上げるのか。もちろん理由がある。有識者会議前の28日の産経新聞は1面トップで「『トマホーク』米から購入へ―政府検討、反撃能力を早期配備」と報じていたからだ。同紙のリードは《……敵ミサイル拠点などへの打撃力を持つことで日本への攻撃を躊躇させる「反撃能力」の保有を念頭に、政府は複数の長射程ミサイルの取得を計画。トマホークの性能は実戦で証明されており、国産より早期配備の可能性がある》と書いている。艦船や潜水艦から発射する巡航ミサイル「トマホーク」(米レイセオン・テクノロジーズ製)は全長約6.2m、時速約900㎞、重量約1500㎏、直径約53㎝、射程約1600㎞であり、1発1~2億円。《海上自衛隊イージス護衛艦の迎撃ミサイル「SM3」を発射する垂直発射装置(VLS)を改修すればトマホークも運用が可能となる》(産経)ので、運用開始は2026年度とする。▶︎
▶︎指摘するまでもないが、中国は沿海地域に射程1500㎞の中距離弾道ミサイル「東風21D」や同射程の地上攻撃巡航ミサイル「長剣10」などを配備、日本にとって重大な脅威である。
こうした現実を直視する有識者会議で長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」の購入を検討すべきとの意見が出たのだ。もう一つ注目すべきは防衛力強化のための研究機関の設置提言だった。そこで言及されたのが米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)の存在だ。インターネットやGPSなどを生み出してきた同計画局の日本版設置の必要性である。確かに「トマホーク」購入や国産地対艦ミサイル開発、さらには極超音速誘導ミサイルも必要だ。だが、その前に米国防総省の別組織、総合評価局(ネットアセスメント局)のような軍事戦略立案部門の創設を検討すべきではないか。先