11月12日付 国際政治小説「おとなしいアメリカ人」に見る、バイデン民主党政権「ウクライナ支援」の行く末

朝日新聞(11月2日付朝刊)によると、政府はサイバー攻撃への防御を強化するため、司令塔機能を担う新組織を内閣官房の国家安全保障局(NSS。局長・秋葉剛男前外務事務次官)の下に新設する方向で検討を始めたという。奇しくも同日の産経新聞(朝刊)コラム欄(「正論」)に外務省出身で元内閣官房副長官補・国家安全保障局次長の兼原信克同志社大学特別客員教授が、「日本のサイバー防衛無能で負ける」と題した記事を寄稿している。 
 なぜ、このタイミングなのか。もちろん、理由はある。政府(内閣官房副長官補室)は10月31日、同20日に首相官邸4階の大会議室で開催された「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」(座長・佐々江賢一郎日本国際問題研究所理事長=元外務事務次官)の議事要旨を公表した。筆者の手元にある議事要旨(A4版10頁)の項目【防衛力の強化】の(防衛産業)に次のように記述されている。有識者会議メンバー10人のうちの1人の発言である。「防衛産業の育成・強化は不可欠。企業が防衛部門から撤退するというケースが出ており、競争力のある国内企業がなければ、優れた装備品などを国産化することは不可能。特にこれから強化しなければならないサイバー部門に民間企業が人や資金を投入しやすい環境をつくるのも国の責務」。有識者会議での協議を通じた提言を受けて、出席した浜田靖一防衛相も以下のように応えている。「……また、防衛産業にはレピュテーションリスクや低い収益率、サプライチェーンリスクやサイバーセキュリティなどの課題が山積しております。防衛生産・技術基盤は防衛力そのものでありますので、防衛省として、その維持・強化に努めていきたいと思っているところであります」。
 では、具体的にどうすれば良いのか。「日本が本格的サイバー防衛に対して無能であり続けるのには理由がある」とする兼原氏は、先のコラムでこう書いている。概略を紹介する。①不正アクセス防止法、不正指令電磁的記録罪の要件を改正して自衛隊への適用除外を認めるべきである②縦割り行政の弊害であるインテリジェンスや治安、防衛に係わる省庁と通常のデータ通信に係わる省庁を統合して総合的なサイバーセキュリティ政策を打ち出す司令塔が必要である③現在の内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を発展解消して内閣に専属のサイバーセキュリティ局を置くべきである――。▶︎

▶︎兼原氏は同会議のメンバーではないが、現在のメンバーの問題意識と概ね一致するのではないか。否、というよりもほぼ一致しているが故に、先の朝日新聞が報じたように、岸田文雄政権は年末の安全保障関連3文書(「国家安全保障戦略」「防衛大綱」「中期防」)改定に合わせて、サイバー攻撃元を特定し、相手のサーバーを使えなくする「積極的サイバー防御(アクティブ・サイバー・ディフェンス)」の導入を、この有識者会議の最終提言に盛り込む意向なのだ。 同紙は関連記事として《政府は年内に改定する安全保障関連3文書のうち、「防衛計画の大綱(防衛大綱)」は「国家防衛戦略」、「中期防衛力整備計画(中期防)」は「防衛力整備計画」と改称する方向で調整に入った》とも報じている。
 要するに、安全保障関連3文書の名称と役割を一新することでまさに「国力としての防衛力」強化のアピールを企図しているのである。基本的な認識で言えば、《台湾有事の暗雲はますます重く垂れこめる。中国の台湾攻略はグレーゾーンでのサイバー攻撃による電力網、通信網の遮断から始まるだろう。日本も自衛隊、米軍基地のある沖縄などの離島の電力が落とされる恐れがある》(兼原氏コラム)にリアリティがある。「積極的サイバー防御」体制の確立は決して他人事ではない。そして外交・安保政策もまた内閣支持率を上げる魔法の杖ではない。「外交の岸田」を自任しているにせよ、それは当然にも自覚しているはずだ。
 だが、11月中旬にはトップ外交が試される。東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議(カンボジア・プノンペン)、主要20カ国・地域(G20)首脳会合(インドネシア・バリ島)、アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議(タイ・バンコク)が控えているのだ。この間に、日米、日中、日米韓首脳会談が行われる。岸田首相には、米メジャーリーグのピッチャーに例えれば150キロ級のスピードボールを投げる意気込みで立ち向かってもらいたい。決してスローカーブやナックルといった奇を衒う球種を投げないよう切に願う。自分はエンゼルスの大谷翔平ではない、と言わずに