11月21日付「本当に『終わり良ければ全て良し』だったのかー唯一のハプニングが物語るもの」

ジョー・バイデン米大統領と中国の習近平国家主席の首脳会談は11月14日午後6時36分から9時48分まで3時間12分の長丁場だった。インドネシアのバリ島で開催された主要20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて実現した。米中首脳の対面会談は2019年6月のG20大阪サミット以来、3年5カ月ぶりである。バイデン、習両氏は上機嫌で会談に臨んだ。映像を検証する。バイデン氏は会場に入るや先に手を差し出し、握手する際に左手を習氏の右手に添えた。習氏は満面の笑みを浮かべ応えている。
 これは親しみ・融和を意味する。対中融和姿勢のシグナルだ。バイデン氏は8日の米中間選挙で与党・民主党が予想を覆して上院多数派を維持した直後である。習氏も先の中国共産党大会で「習1強」体制を確立したばかり。各々が重大な政治行事を乗り切った後の対面会談であり、機嫌が悪いはずがない。米ホワイトハウスが発表した米中首脳会談出席者リストは以下の通り。▶︎

▶︎米側:バイデン大統領、ブリンケン国務長官、イエレン財務長官、サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)、バーンズ駐中国大使、キャンベル大統領副補佐官(兼インド太平洋調整官)、クリテンブリンク国務次官補(東アジア・太平洋担当)、ローゼンバーガー国家安全保障会議(NSC)中国担当上級部長、ドーシNSC中国部長、シーズンNSC中国部長の10人。
中国側:習近平国家主席、丁薛祥共産党政治局常務委員(党中央弁公室主任)、王毅共産党政治局員(国務委員兼外相)、何立峰政治局員(国家発展改革委員会委員長兼政治協商会議副主席)、馬朝旭外務次官、謝鳳外務次官、劉若華国家主席秘書官、華春瑩外務省報道局長、楊涛外務省北米・大洋州局長、鄭立喬同副局長の10人。
 では、バイデン・習近平会談は本当に“終わり良ければ全て良し”で終わったのか。一つだけハプニングがあった。首脳会談の冒頭撮影終了間際、米テレビ局の記者がバイデン氏に「人権問題に言及するのか」と尋ねた。すると中国側の男性が彼女のバックパックを後ろから引っ張り会場出入口に追い立てたのだ。ホワイトハウスのスタッフ2人が仲裁に入り、事なきを得た。中国側が大統領と互角に渡り合う主席の映像をいかに重視しているのかが分かる。そして米メディアからの人権問題の質問は絶対に排除しなければならなかったのだろう。こうした顛末が報道されることは決してない。