1月7日付「日本の国際貢献度が低すぎる」とアメリカ議会が「暴発」寸前…首脳会談直前の岸田首相には“本気度”が求められている

 岸田文雄首相は1月13日、念願かなって米ワシントンのホワイトハウスでジョー・バイデン米大統領と首脳会談を行う。岸田官邸が2023年初っ端の首相外遊として日米首脳会談を想定し、早くから準備していたのは事実である。
 それにはもちろん、理由があった。岸田政権は外交・防衛政策の指針となる「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の安保関連3文書を、昨年12月16日夕に官邸で開催した国家安全保障会議(NSC)、続いて開いた臨時閣議で決定した。この戦後政策の大転換を示す「国家安全保障戦略」(概要)を作成したのはNSC事務局に当たる国家安全保障局(NSS。秋葉剛男局長)である。同概要Ⅲ.に「我が国の国家安全保障に関する基本的な原則」5項目が記述されているが、筆者は本稿で第4項「日米同盟は我が国の安全保障政策の基軸」を取り上げたい。今年は主要7カ国(G7)首脳会議(5月19~21日)の議長国が日本であり、岸田首相の地元・広島で開催される。一昨年10月に政権の座に就いた岸田氏が当初からG7広島サミット実現に強い想いを胸中に秘めていたことは周知の事実である。
 そして昨年は、2月のロシアによるウクライナ侵略に始まり、米中対立が先鋭化するなか中国の台湾侵攻が現実味を帯び、且つ北朝鮮の相次ぐミサイル発射など日本を取り巻く国際環境が激変した1年間だった。では岸田氏自らが主宰するG7サミットを成功裏に終えるための必須条件は何か。それこそ日米同盟の緊密化と、件のバイデン氏の全面協力である。確かに、閣議決定した国家安全保障戦略には「日米安全保障体制を中核とする日米同盟は、我が国の安全保障のみならず、インド太平洋地域を含む国際社会の平和と安定の実現に不可欠な役割を果たす」と書かれている。
 しかし、同盟国の米国が果たしている役割と比べて日本が果たしているそれは彼の国を十分に納得させるものなのか。要するに米側に日本への不満が無いのか、ということなのだ。答えは否である。昨年夏前から日米両国の外交・安保担当高官は様々なレベルで意見交換を重ねてきた。 ▶︎

▶︎そして秋葉NSS局長はカウンターパートであるジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)や米議会有力者との協議の中で、民主、共和党を問わず米議会には日本の「国際貢献」に対する不満が高まり“暴発”寸前であることを知らされたというのだ。岸田官邸が行き着いた結論は、ある意味で極めてシンプルな結論だった。求められる役割を果たす我が国の“本気度”を示すのは「防衛予算」と「防衛装備」であると。23年度当初予算案で防衛費は過去最大の6.8兆円とした。27年度までの5年間に防衛費総額43兆円、現行5年間の計画の約1.5倍に増やすことも決めた。しかもその財源として自民党内の反対論を抑え込んで防衛増税(法人・所得・たばこの3税)を打ち出したのである。 
 一方、安保関連3文書改定の柱である「反撃能力」保有として、相手のミサイル発射拠点を叩く反撃能力を持つ米製巡航ミサイル「トマホーク」取得費2113億円を計上した。さらに反撃能力向上のために、相手の脅威圏外から撃つ長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」の導入も盛り込まれた。付言すべきは、3文書改定の重要項目であるサイバー安全保障の強化を盛り込んだことである。改めて指摘するまでもなく、我が国はサイバー防衛で米欧主要国に大きく後れを取っているからだ。 
 それにしても、である。これまで見てきたように、今回の安保関連3文書改定は、一にかかってバイデン米政権を安堵させるものであったということである。事実、12月16日の閣議決定後の米側の素早い反応が全てを物語っている。バイデン大統領は16日午後7時1分(米東部時間)、ナンシー・ペロシ下院議長(当時)も同9時1分(同)それぞれツイッターで歓迎の意向を表した。それだけではなく、米議会のジャック・リード上院軍事委員長(民主党)、ミット・ロムニー上院外交委員(共和党)ら有力者も歓迎のツイートをしているという。異例のことである。以って懸念された米議会の“暴発”を未然に防いだと言っていい。すなわち、岸田氏は13日のバイデン氏との首脳会談に盤石の自信を持って臨むことができるのだ。