No.668 1月10日号 岸田文雄首相の「対米総力戦」 

岸田文雄首相は1月13日午前(米国東部時間),米ワシントンのホワイハウス(WH)正面玄関で満面の笑みを浮かべ出迎えるジョー・バイデン大統領と固い握手を交わすことになる――。
 その理由を説明するために少々時間を巻き戻したい。昨年12月16日の首相官邸。午後4時33分から国家安全保障会議,続く同4時46分からの臨時閣議で岸田政権の外交・安保政策の指針となる「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の安保関連3文書を決定した。そして岸田首相が「反撃能力」の保有を明記した同文書について記者会見に臨んだのは同午後6時だった。会見は1時間6分に及んだ。そしてバイデンは次のようにツイートした。「米国は,この重要な瞬間に日本とともにある。
 我々の同盟は,自由で開かれたインド太平洋の礎であり,平和と繁栄への日本の貢献を歓迎する。(The United States stands with Japan at this critical moment. Our alliance is the cornerstone of a free and open Indo-Pacific and we welcome Japan’s contributions to peace and prosperity. 12/16/22 am5:01)」と,日本の戦後政策の大転換歓迎の意を表明した。▶︎

▶︎見落とせないのは,ツイートされたのが米国時間16日午前5時01分(日本時間同午後7時01分)であり,まさに首相会見真っ只中であったことだ。大統領のツイートはWHスタッフが事前に入念な準備をするにしても,素早過ぎる対応である。
 それは置くとして,歓迎のツイートはバイデンだけではなかった。当時のナンシー・ペロシ米下院議長(同午前7時01分),アントニー・ブリンケン国務長官(午前9時33分),ロイド・オースティン国防長官(午後3時11分)以下,米議会上院有力者が相次いでツイートした。ジャック・リード上院軍事委員会委員長(民主党),クリス・クーンズ上院外交委員会委員(民主),ビル・ハガティ同委員(共和党),ミット・ロムニー同委員(共和),クリス・マーフィー同委員(民主),リック・スコット上院議員(共和),マルコ・ルビオ上院議員(共和)などである。元駐日米大使のハガティ,バイデンと同じデラウェア州選出の側近のクーンズ,16年米大統領選共和党候補だったルビオらはいずれも親日派であり,対中強硬派として知られる。なぜ,こうした議員名を列挙したのか。これまた理由がある。実は昨年夏過ぎ,ウクライナ戦争の先行きが不透明さを増す一方で米中経済対立の先鋭化は回避できないとの見方が急浮上した。
 そして台湾有事が現実味を帯びる中で,米議会内に日本の「国際貢献」への不満が顕在化し,放置すれば暴発しかねないとの情報がもたらされたのだ…(以下は本誌掲載)申込はこちら