1月14日付「ハーイ!フミオ」「ハーイ!ジョー」岸田首相とバイデン大統領の知られざる信頼関係…首脳会談「異例の厚遇」には理由があった

1月13日午前11時半(米国東部時間・日本時間14日午前1時半)、岸田文雄首相はジョー・バイデン米大統領と首脳会談を行う。日米首脳会談はホワイトハウス(西棟)の大統領執務室(オーバルルーム)での岸田、バイデン両氏のテタテ会談に始まり、日米双方の側近を交えた少人数会合、日米外相・防衛相も参加するワーキングランチなど2時間半に及ぶ長丁場となる。異例の厚遇である。ドナルド・トランプ前大統領と親密な関係を築いた故・安倍晋三元首相ですらこれほど長時間の日米首脳会談をやっていない(但し安倍氏は2017年2月の訪米時にフロリダ州のトランプ氏別荘滞在中の2日間に食事やゴルフなど7時間超の時間を一緒に過ごした)。岸田、バイデン両氏は各々が外相、副大統領時代から波長が合う間柄だった(外務省幹部)にしても、なぜバイデン氏がかくも岸田氏に強い信頼をおいているのかの説明は寡聞にして聞いたことがない。
 ただ、こういう話は耳にしていた。昨年5月に大統領就任後初めて来日したバイデン氏は旧知の岸田氏と同23日午前11時過ぎから東京・元赤坂の迎賓館で首脳会談に臨んだ時のことだ。待ち受ける岸田氏に歩み寄るバイデン氏はやや離れた地点から両手を広げて「ハーイ!フミオ」と近づきハグし、満面の笑みの岸田氏も大きな声で「ハーイ!ジョー」と応えてハグを返したのだ。この想定外の光景に居合わせた同省幹部はビックリしたと言う。この種のパフォーマンスが不得手とされた首相の想定外のアクティブさを岸田周りも予想していなかっただけに、当時のエピソードとして首相官邸や外務省関係者の間で語り継がれているのだ。
 そして今回の日米首脳会談に際しての米側の異例の厚遇は両氏の緊密な信頼関係の証しであり、必然的帰結であると、先の外務省幹部は筆者に語った。▶︎

▶︎それにしても、である。この信頼関係はいかにして醸成されたのか。最大の契機となったのが、既報したように12月16日の「国家安全保障戦略」など安保関連3文書の閣議決定だった。岸田氏が乾坤一擲、同文書に「反撃能力」の保有を明記したことが決定的だった。
 加えて、同23日の閣議で114兆円超の2023年度当初予算案で防衛費を過去最大の6.8兆円超計上し、さらに27年度までの5年間に現行計画の約1.5倍に達する防衛費総額43兆円にすることを決定したのが大きかった。米側の歓迎・支持ツイート・ラッシュは想像を遥かに超えたものだった。バイデン大統領以下、アントニー・ブリンケン国務長官、ロイド・オースティン国防長官など政権中枢はもとより、米議会有力者からのツイート攻勢は以下の通りである。ジャック・リード上院軍事委員長(民主党)を始め、大統領側近のクリス・クーンズ(民主)、元駐日米大使のビル・ハガティ(共和党)、ミット・ロムニー(共和)、クリス・マーフィー(民主)、マルコ・ルビオ(共和)ら大物上院議員が挙ってツイートした。日本が戦後の安全保障政策の大転換に踏み切ったと、民主、共和両党幹部が諸手を挙げて歓迎・支持の意を表明したのだ。そして議会有力者の賛同がバイデン氏の「反撃能力」の日米協力深化への確信を深めたのである。岸田氏は首脳会談後の午後3時からワシントン市内のジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)ライシャワー東アジア研究所(ケント・カルダー所長)で講演する。中曽根康弘首相(当時)が東西冷戦真っ只中の83年5月に講演して以来、現職首相のSAISスピーチは40年ぶりだ。
 注目すべきは、ドイツ政府が93年に冷戦の平和的終結の象徴として寄贈した「ベルリンの壁」が飾られているニッツェ校舎(冷戦期に核戦力・軍備管理政策を推進したポール・ニッツェ元米海軍長官に因んで名付けられた)の講堂で岸田氏が講演することだ。流行語「フェアネス(公正)」を期して言う。ウクライナ戦争の最中の今、冷戦の歴史を想起させる場所での講演を密かに且つ早くにセッティングした外務省に敬意を表したい。