1月17日付 軍事シミュレーション「机上演習」が現実味を帯びてきた まさに〝指呼の距離〟沖縄県与那国島の北北西80キロに着水した中国ミサイル 

米国有力シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS。ジョン・ハムレ所長)は1月9日、中国が2026年に台湾に侵攻するという設定で軍事シミュレーションを実施、その結果を公表した。産経新聞(11日付朝刊)によると、その結果は「中国の台湾侵攻は失敗」するが、「台湾防衛時に日米両国は大損害」を被るというのだ。CSISではこのシミュレーションを「机上演習(ウォーゲーム)」と呼ぶ。筆者は80年代後半、ワシントンを訪れた際に米国防総合大学(NDU)研究員のパトリック・クローニン氏(現ハドソン研究所アジア太平洋安全保障部長)からその詳細の説明を聞く機会があった。実はNDUこそがウォーゲームの家元なのだ。
 一方、近年では我が国でも日本戦略研究フォーラム(屋山太郎会長)が21年と22年の8月に台湾・尖閣危機に際しての政策シミュレーションを行っている。21年夏のそれには「2024年3月29日02時、中国は台湾本島と澎湖諸島の政治経済中枢、台湾軍司令部、早期警戒レーダー、通信施設に向けて弾道ミサイル、巡航ミサイルを発射した」と記述されていた。▶︎

▶︎その予測に違わず、机上演習が現実味を帯びてきたのである。中国は台湾を訪れたナンシー・ペロシ米下院議長(当時)の離台翌日の昨年8月4日、9発の弾道ミサイルを発射、そのうち5発が我が国の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。
 ところがEEZ外に落下したことで大きく報道されなかったが、実は同日午後2時56分頃、中国福建省沿岸から発射された短距離弾道ミサイルDF-11が沖縄県与那国島の北北西約80㎞に着水したのだ。まさに指呼の距離である。2時間半に及んだ日米首脳会談直前の11日に米ワシントンで日米安全保障委員会(2+2)が開かれた。米側は沖縄県に駐留する米海兵隊を25年度までに改編し、南西諸島有事に即応する「海兵沿岸連隊(MLR)」創設を日本側に伝えた。台湾有事がもちろん念頭にある。
 ここで指摘すべきは、台湾有事の前哨戦となる沖縄有事への我が国の「備え」である。沖縄本島から約400㎞、台湾まで270㎞に位置する石垣島に陸上自衛隊普通科連隊570人が3月に駐屯する。観光ブームに沸く同島の人口は5万人(他に住民未登録が1万人)だが、有事の際の住民退避計画はゼロに等しい。同市庁舎の地下シェルターが唯一の「備え」というのが現実である。