2月7日付 なぜ一部メディアは「米軍高官メモ」を報じないのか 「台湾有事が2025年に起こると予測」米三大テレビのスクープなのに

過日、新聞各紙を読んで不思議に思ったことがあった。それは「米空軍高官が内部メモで、台湾有事が2025年に起こると予測して準備を急ぐよう指示したことが27日、分かった」(日本経済新聞1月29日付朝刊)という米ワシントン発の記事である。その「米空軍高官」はマイク・ミニハン米航空機動司令官(米空軍大将・前インド太平洋軍副司令官)である。
 そして「メモ」とは、米空軍のロジスティックを担う航空機動司令部の同司令官が指揮下にある5つの部隊に指示した2月1日付のメモランダムだ。米NBCが27日夜のニュースでスクープした。驚かされたのは、NBCがメモの発出前にその原文(コピー)を入手していたことだ。入手方法は措くとして、大スクープであることは間違いない。メモを読めば分かる。冒頭に「私が間違っていることを望む(I hope I am wrong)」とした上で、「2025年に(中国と)戦う予感がする」と断じているのだ。
 さらに次のように記述している。24年の台湾の総統選は習近平中国共産党総書記に理由を与え、米大統領選で内政に気を取られる米国は隙を与えるため、台湾を侵攻する可能性があるというのである。▶︎

▶︎そもそも3期目の習指導部下での台湾有事には「25年」と「27年」の両説があった。21年春にジェイムズ・スタヴリディス元NATO軍最高司令官(退役海軍大将)が小説『2034米中戦争』を刊行、リアリティがあり過ぎると話題となった。ここでは「34年」説を無視し、件のメモに戻る。当初、米国防総省(ペンタゴン)当局者は事前のNBCの取材に対し、「(ミニハン氏の)メモは中国に関する国防総省の見解を代表するものではない」と答えた。
 しかしその後、パット・ライダー報道官は27日に「米国防戦略は、中国がペンタゴンにとって刻々と深刻になる挑戦であり、同盟国と同志国とともに平和的かつ自由で開かれたインド太平洋の維持に向けた取り組みに重点を置いていくと明確にしている」と、中国抑止の強化とメモの容認と受け止められる声明を発表した。
 要するに、「米空軍高官内部メモ」のスクープをペンタゴンが認めたのだ。そこで筆者の冒頭に記した印象に戻したい。我が国メディアの一部ワシントン特派員はなぜ、報道しなかったのかである。米三大テレビ・ネットワークのスクープなのに、不思議でならない。