2月25日付 G7でウクライナを訪問していないのは岸田首相だけ…国民の不信感を助長する「決断力」の無さ

岸田文雄内閣の直近の支持率をチェックする。NHK調査(2月10~12日実施):支持率前月比3ポイント増の35.7%、不支持率同3.8P減の40.9%、共同通信(11~13日):支持率0.2P増の33.6%、不支持率2.2P減の47.7%、読売新聞・日本テレビ合同調査(17~19日):支持率2P 増の41%、不支持率増減0の47%、毎日新聞(18~19日):支持率1P減の26%、不支持率2P減の64%、産経新聞・FNN合同調査(18~19日):支持率2.9P増の40.6%、不支持率5.5P減の52.6%―――。 
 筆者の相場観からすると、40%を上回った「読売」と「産経」調査は高すぎるし、「毎日」調査の20%台半ばは低すぎるように思う。それはともかく、内閣支持率が30%台半ば、不支持率は40%台後半というのが国民目線に近いのではないか。すなわち、依然として不支持率が支持率を大幅に上回っているということである。では、岸田政権が低空飛行を余儀なくされている理由はいったい何なのか。先ず、指摘されるのは操縦桿を握るパイロットの岸田首相に大型航空機を運航するだけの経験に欠くというものだ。機種自体について知識が不十分であるだけでなく、実は航空機運航自体の経験が不足しているとの手厳しい指弾もある。そもそも乗客を大勢乗せた「ニッポン号」の操縦を任せられる力量(資格?)がないパイロットであるとの指弾も少なくない。 雑誌メディアを散見すれば分かるが、「『暗愚の宰相』追及第2弾」(『週刊ポスト』3月3日号)、「岸田『異次元の少子化対策』の欺瞞」、「岸田『増税解散』の虚勢」(共に『選択』2月号)など、岸田氏個人の「器量」について疑問符を投げかけ、4月の統一地方選後にも自民党内の反岸田勢力が菅義偉前首相を担いで「岸田おろし」が起こり得る状況にあるというのである。果たしてリアリティはあるのか。
 今年の干支は卯年である。歴史を遡ると、2011年の3・11東日本大震災後の9月2日に旧民主党の菅直人政権から野田佳彦政権へ交代、1999年9月21日の自民党総裁選で無投票再選を望んだ小渕恵三首相(総裁)に加藤紘一、山崎拓両氏が挑戦、しこりが残り翌年の「加藤の乱」を招く。1987年10月20日、中曽根康弘首相は自民党総裁に次を争った「安(倍晋太郎)・竹(下登)・宮(澤喜一)」から竹下登幹事長を指名し、翌月11月6日に竹下内閣が発足――など最近3度の卯年が時代の節目の年であった。▶︎

▶︎では、今年2023年はどうなのか。国内の政治・経済状況もさる事ながら、やはり日本を取り巻く国際安全保障環境絡みで何らかの大きな出来事が起こる予感がする。ジョー・バイデン米大統領が20日午前8時(現地時間・日本時間午後3時)、極秘裏にウクライナの首都キーウに入り、約5時間の滞在中にウォロディミル・ゼレンスキー大統領との会談が実現した。バイデン氏はジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)、ジェン・オマリーディロン大統領次席補佐官、アニー・トマシーニ大統領執務室オペレーション部長ら少人数の側近、医療チーム、大統領警護隊(シークレットサービス)だけを伴い、19日午前4時15分(米東部時間・日本時間19日午後6時15分)にワシントン郊外のアンドルーズ米空軍基地を発った。
 その後の行程は、筆者が前号で言及した「幻の岸田首相ウクライナ訪問」計画と同じルートでポーランド東南部のジェシュフ・ジャシオンカ空港→陸路をウクライナとの国境に位置するプシェミシル駅→鉄路(寝台車)でキーウ到着だった。このバイデン氏電撃訪問が岸田氏のウクライナ訪問圧力となる。恐らく3月中に訪れるはずだ。しかし、問題が別にある。岸田氏はバイデン氏がまさにキーウ滞在中の20日夕、東京・虎ノ門で行なわれた講演の中で対ウクライナ55億㌦(約7370億円)の追加財政支援をすると表明した。
 これまでの日本の人道・財政・軍事支援総額が877億円であることからも、その巨額に驚かされた。財務省が密かに準備したウルトラCである。聞き及ぶところによると、この膨大な追加財政支援発表のタイミングを巡り岸田官邸で対立があったという。外務省の外郭団体・日本国際問題研究所(理事長・佐々江賢一郎元駐米大使)主催の講演派と24日に予定される岸田氏が議長の先進7カ国(G7)首脳テレビ会議派の対立だ今回は前者の主張が通ったが、このように大きなイシューで首相抜きの側近対立が指摘されている。「暗愚の宰相」とまで言わないが、どうやら岸田氏の「決断力」は「聞く力」よりも劣るとされるのは止むを得ないのかもしれない。それにしてもG7サミットメンバーでウクライナを訪問していないのは岸田氏のみだ。果たして岸田氏のウクライナ訪問というサプライズが支持率を押し上げることになるのか、予断を許さない。