過日、一時帰国中の宮島昭夫駐ポーランド大使と長時間話す機会を得た。隣国ウクライナは今、ロシアの侵略に対し徹底抗戦の真っ只中にいる。 昨年2月の軍事侵攻以降、国外に逃れたウクライナ避難民は807万人に達する(2月15日時点)。 ポーランドは最大の156万人を受け入れている。侵攻後1年間に累計で929万人が国境を越え、その後出国した総数は745万人(ポーランド国境警備隊調査)。 ポーランド政府は開戦後わずか2週間でウクライナ避難民支援の法案を成立させた。18カ月間滞在できるほか、ポーランド人と同等の居住・就労・教育・医療など社会保障サービスを提供、保証する個人番号の取得も認める。
と同時に、避難民を受け入れる家庭には1人当たり一日約1200円を120日間支給、公共料金無償化などの支援も実施しているのだ。インフレ率20%の経済危機に直面する同国は国家予算約1割に相当する90億ユーロ(約1兆2500億円)の財政的負担を強いられながら避難民支援を行っている。「第2次世界大戦のナチス・ドイツや旧ソ連をはじめ大国による侵略・支配を経験しているポーランドは避難民の受け入れだけではなく、同国への軍事支援にも全力で取り組んでいる」(宮島氏)▶︎
▶︎数字がそれを示している。ポーランドは対ウクライナ軍事支援輸送の戦略的拠点の役割以外に、同国軍の旧ソ連製戦車など正面装備や弾薬の提供をしており、その総額は2600億円。3.3兆円の米国、英、独に続く(独キール世界経済研究所)。では、日本はどうなのか。軍事・人道・財政の支援総額で875億円の日本は13番目であり、スウェーデン、イタリア、デンマークより下回る。日本の対ウクライナ軍事支援物資は「防衛装備移転三原則」の縛りがあり限られる。
そうした中、20日のバイデン米大統領の電撃ウクライナ訪問が現状を変えた。岸田文雄首相がその直後に7370億円の追加財政支援を発表、日本はドイツに並び支援国第4位にランクを上げたのである。欧州の中心に位置するポーランドは道路・鉄道・港・空港の全ての物流拠点を有し、アジアと欧州を陸路で結ぶ際の物流の玄関口なのだ。折しも2月15日、首都ワルシャワで同国自治体と支援国企業がウクライナ復興に向けた国際商談会を開催した。実は同国の防衛装備には韓国製が多い。そして商談会に参加した韓国企業は早くも約100兆円とされる復興特需に狙いを定めているのだ。この現実を知る必要がある。