No.671 3月10日号 岸田文雄首相は今月末キーウ訪問か 

4月9日,日本銀行第32代総裁植田和男が誕生する。関心が集まる植田日銀による超金融緩和政策修正の有無については別稿にあるので,本稿では総裁人事を巡る憶測優先の中で表に出なかった情報を紹介する。先ずは2月27日参院議院運営委員会で行われた総裁候補植田の所信聴取で質問に立った世耕弘成参院自民党幹事長(安倍派)である。世耕は,日本生産性本部(会長・茂木友三郎キッコーマン名誉会長)主導で昨年6月に発足した令和国民会議(令和臨調)が1月30日に行った緊急提言「政府と日本銀行の新たな『共同声明』の作成・公表を」を取り上げて,次のように質した。
 「この緊急提言を書いた方が二名おります。一人は元メガバンクのトップで,もう一人はメガバンク系列のシンクタンクのトップであります。金融関係者です。強硬な引き締め派であり,アベノミクス・黒田緩和に批判的な姿勢を取ってきた方ですから,提言にある程度バイアスがかかっていると見なければなりません。政府と日銀の共同声明を見直して『2%目標を長期的目標に』,『金利機能回復と国債の正常化を図れ』と提言していますが,植田候補はどうお考えですか」――。▶︎

▶︎そして植田答弁は「インフレ率の動きについて好い目が出つつありますので,現行の『出来るだけ早く』という目標を踏襲した上で金融緩和を続けていくのが適切と考えています」だった。世耕は安堵したはずだ。だが本誌の関心は「元メガバンクのトップとシンクタンクのトップ」を特定・紹介することである。前者が平野信行元三菱UFJフィナンシャル・グループ会長,後者は翁百合日本総研理事長だ。平野,翁の2人は連名で『文藝春秋』(3月号)に「脱アベノミクス宣言」を寄稿しており“確信犯”と言っていい。
 今後注視すべきはアベノミクス守護派と脱派の論争の中で植田が如何なる指導力を発揮するのかである。その植田を総裁に選んだのは岸田文雄首相,木原誠二官房副長官,嶋田隆首相首席秘書官の「岸田官邸のスリートップ」だ。人選の過程で保秘態勢が完璧だったのは特筆に値する。故・与謝野馨通産相,経済財政相,官房長官,財務・金融・経済財政相秘書官を歴任した元経産事務次官の嶋田は,与謝野近親者から植田を紹介されたという。永い付き合いなのだ。そして岸田は正月三が日に首相公邸で年賀挨拶を受ける名目で植田と会い,長時間にわたって金融政策を質し,「植田総裁」を決断したとされる…(以下は本誌掲載)申込はこちら