No.672 3月25日号 岸田首相の光となる「ウクライナ」 

第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表(侍ジャパン)は3月21日夜(米東部時間・日本時間22日午前)フロリダ州マイアミで行われた決勝で前回覇者の米国を3-2で破り,14年ぶりに世界一を奪還した。WBC劇場は国民を釘付けにして止まなかった。
 一方,岸田文雄首相は21日正午(ウクライナ現地時間・日本時間同午後7時),この間の外交ラッシュ―16日の尹錫悦韓国大統領(東京),18日のオラフ・ショルツ独首相(東京),20日のナレンドラ・モディ印首相(インドの首都ニューデリー)との首脳会談―の総仕上げとして首都キーウを電撃訪問した。
 そして同日15:50から大統領府でウォロディミル・ゼレンスキー大統領と対面で首脳会談を果たした。岸田のニューデリーからキーウまでの行程を検証する。20日20:00頃(日本時間同日23:30),宿泊先のタージパレスホテルを極秘裏に出発(同行記者を置き去りにして脱出!),パラム空軍基地を全日空(ANA)が事前に手配,運航したカナダのボンバルディア社製ビジネスジェット機「グローバル7500」でポーランド南東部ジェシュフのジャシオンカ空港に向けて発った。降り立ったのが20日23:40(日本時間21日07:40)。同行者は木原誠二官房副長官,秋葉剛男国家安全保障局(NSS)局長,山田重夫外務審議官(政務),中込正志欧州局長,室田幸靖NSS内閣審議官,欧州局中東欧課通訳のM・S,そして警視庁警備部警護課の首相警護員(SP)ら総勢12人である。▶︎

▶︎同空港から首相一行はウクライナの国境近くの町プシェミシルの駅に到着したのが21日01:25(日本時間同09:25)過ぎ(注:事前に察知したNHKと日本テレビは一行を乗せた車列の駅到着と列車に乗り込む姿を撮影。尚,NHKは19日深夜にインドに向け首相が搭乗する政府専用機出発の3時間前に発った件のビジネスジェット機も撮っていた)。
 その後,特別列車で約10時間かけてキーウ中央駅に着いたのは同日12:00頃。同駅にはエミネ・ジャパロワ外務第1次官,松田邦紀駐ウクライナ大使らが出迎えた。ゼレンスキーとのトップ会談はワーキングランチを含めて約2時間40分に及び,共同記者会見で「両国関係を特別なグローバル・パートナーシップに格上げする」と発表した。首脳会談の肝は,2月24日に行われたG7オンライン首脳会合で合意した対露制裁を巡る協議で岸田が「第三者からロシアへの軍事的な支援を防ぐことが重要であり,引き続きG7を始めとする同志国と緊密に連携して対応したい」と述べたことである。
 そして22日未明(現地時間)に往路と同じ列車でキーウを発ち,同日05:00頃ポーランドのプシェミシル駅に到着,直ちに首都ワルシャワへ向かった。同09:25に始まったアンジェイ・ドゥダ大統領との首脳会談を終えて同地空港から帰国の途に就いた。インド→ポーランド→ウクライナ→ポーランド→日本の大長征は2泊(機中)5日の超強行日程だったが,岸田は大きな外交成果を掌中に収めた…(以下は本誌掲載)申込はこちら