4月11日付 進まぬトランプ氏の〝復活劇〟起訴騒動は有利も…熱狂的な支持者がいきり立たず バイデン氏は大統領選にらみ静観

4月4日、米東部ニューヨークで久々に「トランプ劇場」開演の幕が上がった。ドナルド・トランプ前大統領が不倫関係にあったとされるポルノ女優への口止め料を不正に処理したとして起訴された裁判の罪状認否でニューヨーク州裁判所に出廷したのだ。
 もちろん、トランプ氏は起訴事実を全面否認した。ニューヨーク州マンハッタン地区検察のアルビン・ブラッグ検事長(民主党)が明かした起訴事実は、不倫相手への口止め料の支払いを巡る虚偽記載を含む34件の罪状に及ぶ。その罪状は全て一族が経営する中核企業「トランプ・オーガニゼーション」の業務記録の改竄に関わるものだ。この口止め料疑惑以外の議会襲撃扇動疑惑、機密文書持ち出し、大統領選挙介入など他の罪を犯したり、隠蔽したりする意図をもって業務記録を改竄した場合は重罪である。だが、その立証のハードルは高い。事実、同夜の民主党系CNNテレビ特番でコメンテーターは「トランプに投げかけられたのは石ではなく砂利だった」と起訴内容に落胆する声を漏らした。司法関係者の間でも判事に起訴が却下される可能性は否定できないと、検察の法廷戦術を疑問視する向きが少なくない。
 それにしても、当日のトランプ氏の反応が気になる。映像をチェックすると分かるが、罪状認否で無罪を主張した午後3時頃、さらに法廷を去った同3時半頃の同氏の表情が極めて硬いのだ。終始不機嫌な様子で落ち込んでいるように映った。▶︎

▶︎加えて同夜8時半頃、フロリダ州パームビーチの邸宅「マール・ア・ラーゴ」に戻って、支持者を前に演説した。しかし、聴衆の熱狂はそれほどではなく、同氏の演説にも熱量が感じられなかった。
 いわば幕を下ろした舞台でカーテンコールがなかった印象である。トランプ氏が事前に思い描いたシナリオ通りに復活劇は進んでいないのではないか。熱狂的な支持者がいきり立つような光景がなかったのだ。同氏は演説で「今、我が国はかつてない規模の選挙干渉が、急進左派の支援を受けた検事により始まった」と断じた。確かに依然として岩盤支持層を掌中に収めている。
 だが、「トランプ劇場」に足を運ぶ共和党支持者が減少しているのもまた事実である。では、この起訴騒動を静観するジョー・バイデン大統領はどうか。本音は来年秋の大統領本選で「刑事被告人」トランプ氏との一騎打ちを望んでいる。それが唯一の勝機と見ているからだ。