4月25日付 AIに対する岸田首相の「立ち位置」とは 「チャットGPT」開発企業CEO、表敬訪問の意図 ヒントはG7の議長にあった

先週、対話型人工知能(AI)「チャットGPT」について言及した。そしてその開発者である米新興企業オープンAI社のサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が岸田文雄首相を表敬したと書いたことで、かなりの反響があった。最近の経済雑誌の関心事はIT(情報技術)関連巨大企業の5社「GAFAM」(Google,Apple,Facebook,Amazon,Microsoft)から文章や画像を自動生成するAIのスタートアップ企業に転じている。その象徴がまさに弱冠38歳のアルトマン氏率いるオープンAI社である。同社は米マイクロソフトから19年と21年に続き今年1月にも100億㌦(約1兆3000億円)の追加出資を受けた。同社の独走態勢に待ったをかけたのはやはり新参企業アンソロピック社である。オープンAIや米グーグル出身の技術者が21年に設立したが、グーグルはマイクロソフトとは桁が違うが2月に3億㌦(約402億円)の投資を発表している。
 そして結びの一番で横綱のアマゾン・ドット・コムが土俵に上がったのだ。傘下のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は4月13日、生成AI事業参入を発表。自社開発の基盤サービス「アマゾンベッドロック」の提供を開始するという。▶︎

▶︎こうしてマイクロソフト、グーグル、アマゾンのクラウドコンピューティング「3強」の揃い踏みとなった。 それだけではない。著名な投資家イーロン・マスク氏(テスラCEO)のAI開発会社「X.AI」が新たに「トゥルースGPT」を開発すると17日の米FOXニュースが報じた。同氏が視野に入れるのは最新言語モデル「GPT-4 」発売に踏み切ったオープンAI社追撃だ。奇しくも、マスク氏は同社創業時の有力出資者であり、因果は巡るのである。
 では、こうしたクラウド3強に挑むスタートアップ勢力との覇権争いの中で、岸田氏の立ち位置は如何なるものなのか。その解を求めるには、たとえ短時間の面会とはいえ、なぜ岸田氏はアルトマン氏と会ったのかその理由を探る必要がある。ヒントは首相が5月のG7広島サミット議長を務めることにある。同氏には理由があった。イタリアでチャットGPT使用が一時的に停止されたように欧州では規制強化の動きがある。このため広島サミットで生成AIに関する規制の議論を岸田氏にリードして欲しいと要望したのだ。
 一方の岸田氏にとっても、デジタル覇権は重要議題であり、国際的スーパースターとの面会はG7首脳会議における「手札」となるのである。