5月15日付 バイデン政権の『先行き不安』な人事ー民主党左派からもウクライナ支援からの足抜き模索

ジョー・バイデン米大統領は5月5日、ホワイトハウス(WH)の主要人事を発表した。同26日に退任する国内政策会議(DPC)委員長のスーザン・ライス大統領補佐官の後任にニーラ・タンデン大統領上級顧問(内政担当)が起用される。 最近の政・官・業界ではインド系米国人の活躍が報じられているが、バイデン政権も同様である。WHにはすでにアラティ・プラバカー大統領補佐官(科学担当・64歳)がいる。
 同女史は、注目を集める対話型人工知能(AI)チャットDPTの規制問題を所管する米科学技術政策局(OSTP)局長も兼務している。オバマ民主党政権下でペンタゴン(国防総省)の国防高等研究計画局(DARPA)局長も務めた辣腕として知られる。 
 同じくインド系のタンデン女史(52)は1988年大統領選の民主党予備選でマイケル・デュカキス氏を支援したのが政治キャリアの皮切りで、その後はビル・クリントン元大統領陣営の政策アドバイザーとなったが、同夫人のヒラリー元国務長官が最も信頼する側近として知られた。▶︎

▶︎その後、リベラル色の強いシンクタンク、米国進歩センター所長を務めるなど一貫して民主党左派の中核を担ってきた。
 事実、バイデン氏は政権発足に当たって米行政管理予算局(OMB)局長に指名したが、党重鎮のジョー・マンチン上院議員から左派色が強いと反対されて、指名撤回を余儀なくされた経緯がある。WH西棟1階のエントランスから正面に向かって一番奥の左角部屋(南東)がオーバルルーム(大統領執務室)である。タンデン氏の執務室は同2階。同階南東角部屋は会議室であり、その西隣がアニタ・ダン大統領上級顧問(65)、さらに隣がタンデン氏の執務室だ。
 なぜ、これほど各人の執務室の位置に拘るのか。もちろん、理由がある。バイデン氏が信を置く最側近は40年以上の知己マイク・ドニロン大統領上級顧問であることは周知の事実だ。同氏の執務室は大統領執務室と廊下を隔てたルーズベルトルームの真向いにあり、大統領専用ダイニングの西隣である。要は大統領執務室に最も近いのだ。 そのドニロン氏もタンデン氏を評価しているというのだ。その重用がWH見取り図から窺える。実は、この人事がバイデン政権の先行き不安要因となり得るのだ。ウクライナ戦争の長期化不可避の戦況によって、共和党だけでなく民主党左派もウクライナ全面支援からの足抜きを模索し始めているのだ