5月23日付 広島サミット成功の裏にイタリア首相の〝メローニ・ファクター〟 中国の「力による現状変更」容認せずで完全一致

5月21日、G7広島サミットはウクライナのゼレンスキー大統領緊急参加のサプライズもあり、成功裏に終わった。岸田文雄首相は「してやったり」と満足感に浸っているに違いない。ここでは、まず「岸田外交」をお浚いしたい。今年は1月9~15日の欧米5カ国歴訪からスタートした。訪問した国はフランス→イタリア→英国→カナダ→米国である。米ワシントンではバイデン大統領と念願のホワイトハウスで長時間会談。
 そして同氏とは極めて馬が合う間柄であることを改めて国内外に示した。実は、筆者が最も注目したのはローマでの日伊首脳会談だった。自民党リベラルの遺伝子(DNA)を持つ岸田氏が、かつて下院議員時代に「極右」とされた「メローニ首相とケミストリー(外交用語で意気投合する)が一致したのには驚いた」と、後に同行した外務省高官から聞かされた。広島サミット成功の裏には“メローニ・ファクター”があった。表沙汰にはならなかったが、同氏は中国の習近平国家主席が主導する「一帯一路」(広域経済圏構想)からの脱退を示唆したとされる。岸田氏が来日した各国首脳の中で最初に個別会談を行ったのはメローニ氏だった。▶︎ 

▶︎もちろん、今回の最重要テーマはロシアと戦うウクライナとの連帯と全面支援の確認であった。と同時に、15カ国・国際機関首脳が中国の「力による現状変更」を容認しないことで完全一致したことは特筆に値する。
 それは、サミット開幕前日の日米首脳会談からも窺えた。両首脳以下、日米双方6人が出席した。米側の6人目が3月まで米国家安全保障会議(NSC)の中国上級部長を務めたローゼンバーガー米国在台湾協会(AIT)理事長であった。バイデン政権の対中強硬派として知られた同女史を同席させた意味は大きい。
 筆者は、首脳会談における少人数・拡大会合出席者の席次に拘る。米側は大統領、ブリンケン国務長官、サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)、エマニュエル駐日米大使、キャンベルNSCインド太平洋調整官、ローゼンバーガー氏。日本側が首相、林芳正外相、木原誠二官房副長官、秋葉剛男国家安全保障局長、冨田浩司駐米大使、山田重夫外務審議官だ。山田氏のカウンターパートはキャンベル氏であり、同女史は日本で言えば局長級である。席次からすると異例と言える。ここにバイデン氏のメッセージが見て取れるのだ。日米首脳会談を起点としたG7サミットの主要テーマがウクライナ「全面支援」以外に、台湾有事を念頭に置いた「対中牽制」だったことになる。