6月3日付「ウクライナ復興支援」その事態が見えてきた…戦場と化した「農業大国ウクライナ」インフラ、医療、農業へのグローバル支援の行方

6月21~22日、英国、ウクライナ両政府が共催する「ウクライナ復興会議(Ukraine Recovery Conference)」が、ロンドン市南東部グリニッジ地区のテムズ川南岸に面したインターコンチネンタル・ロンドン‐TheO2で開かれる。60カ国以上の国、国際機関、民間企業、市民社会団体から1000人規模の出席が予定されている。西欧諸国以外ではサウジアラビア、カタールなど湾岸協力会議(GCC)加盟国、インド、タイ、インドネシア、シンガポール、ナイジェリア、ガーナ、ケニア、ブラジルなどグローバルサウス諸国も参加する(6月21日が通常国会会期末であり、現時点で林芳正外相の出席は未定である。G7など各国は外相出席が原則)。同会議冒頭に英国のリシ・スナク首相、ウクライナのデニス・シュミハリ首相が登壇する。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はオンライン参加する予定だ。
 この復興会議の前身は、ウクライナの国内改革を西側諸国が支援することを目的として2017年から過去4回開催されてきた「ウクライナの改革に関する会議(Ukraine Reform Conference)」であり、昨年7月にスイスが主催した際にウクライナの復興・回復に特化・改編された。G7広島サミット(5月19~21日)開幕数日前、予定表を手に筆者は首相官邸関係者に「注目すべきアジェンダは何か?」と尋ねたら、「20日午後のサイドイベントPGIIです」との回答を得た。以来、「グローバル・インフラ投資パートナーシップ」と訳されるこのPGIIに関心を持ち続けてきた。政府高官に「米国主導の途上国向け、特にアフリカ、中南米などの港湾・橋梁・道路・鉄道などインフラ支援プロジェクト」と言われたが、内実はウクライナ復興支援であろうと踏んでいた。ここに来て復興支援の事態が垣間見えてきた。その一端を筆者が編集・発行する情報誌「インサイドライン」(5月25日号)で言及した。
 さらに詳述したい。広島サミットが開幕した5月19日のことだ。ウクライナのブチャ(侵攻したロシア軍による大虐殺があった首都キーウ近郊の都市であり、岸田文雄首相が3月に電撃訪問した際に真っ先に献花のため訪れた)で、ポーランドの企業Hynfra社(社長は日系ポーランド人)、現地企業UTEM社、日本のつばめBHB社(渡邊昌宏社長)の3社間で同市の「グリーンインダストリアルゾーン」プロジェクトのLOI(意向表明書)が締結された。▶︎

▶︎これがロンドンでの復興会議においてMOU(基本合意契約書)締結に進展する。その概要は次のようなものである。東京工業大学発のスタートアップつばめ社の技術でプラント建設し、グリーンアンモニアを製造・グリーン肥料の生産を目指す。このプロジェクトには日本政府のグリーンイノベーション基金(所管・経済産業省=国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構に設置)の支援が適用される。戦場と化した農業大国ウクライナは現在、深刻な肥料不足に直面している。
 さらに冬季厳寒のウクライナでは必須のセントラル・ヒーティングシステムが戦争で壊滅状態にあり、再生エネルギーから電力、水素、アンモニアを生産するコジェネシステムを構築してつばめ社の技術供与によるグリーン熱源の確保も目指す。肥料同様に熱源確保の支援プロジェクトである。これ以外にも進行中の支援プロジェクトがある。戦争が長期化するなか、医療資源や医療従事者の逼迫が続くウクライナで、大手IT企業のDeNA(岡村信悟社長・CEO)が昨年5月に買収した医療スタートアップのアルム社(坂野哲平社長)が同国保健省(MOH)と連携して遠隔医療支援の拡大を進めている。こうした救急医療プラットフォーム確立には、AIによるトリアージなど日本の技術以外にもイスラエル技術の小児科・呼吸器・感染診療、ブラジル技術の眼科・脳神経診療、台湾技術の健康診断・外傷・整形外科診療、そしてウクライナ技術の心臓モニタリングなど多国間協力がその底流にある。戦時下で医師不足に対し周辺国から専門医による遠隔診療サービスの提供、医療従事者ネットワーク(アルム社開発のアプリ「join」活用)の構築、ポータブル医療機器の提供などを行う。
 こちらもロンドンで同社とMOHのMOU締結が見込まれている。要は、これらはウクライナ復興支援であり、復興ビジネスでもあるということなのだ。こうしたプロジェクトをバックアップしているのは経済産業省である。まさにいい意味で官民一体の証と言っていい。ウクライナ戦争の最中にある今、メディアは「いいものはいい、悪いものは悪い」と公正な評価をすべきではないか。