No.678 6月25日号 9月末解散・10月総選挙の可能性大 

6月21日に閉会した第211回通常国会最終盤の「解散騒動」はいったい何だったのか――。岸田文雄首相は14日夕,自民党の茂木敏充幹事長に対し立憲民主党(泉健太代表)が衆院に内閣不信任決議案を提出すれば16日の衆院本会議で粛々と否決するよう指示し,永田町を騒然とさせた月内衆院解散・総選挙説に終止符が打たれた。
 だが首相指示を受けた直後に茂木が電話で党執行部幹部に通報した際,その中の一人は開口一番「解散ですか?」と語ったとされることからも分かるが,党内の大勢は早期解散あり得ると見ていた。では本当に5月中旬から6月中旬にかけて「岸田の心は(早期解散で)揺れ動いている(た)」(『読売新聞』11日付朝刊)のかを検証しなければならない。確かに,岸田は度々「解散権」をちらつかせ過ぎた。解散によってクビを切られる当該の衆院議員はもとより秘書(公設・地元),取材者だけでなく,その家族から選挙事務の総務省自治行政局選挙部実務担当者までも“弄んだ”と言えよう。しかし,岸田にはその自覚はない。
 何故ならば,岸田は端から国会会期中の衆院解散・7月総選挙(例えば6月16日解散・同27日公示・7月9日投開票,7月11日公示・同23日投開票)を考えていなかったからである。と断じると,こう反駁されそうだ。▶︎

▶︎13日夕の記者会見で今国会中に衆院解散に踏み切るかどうかを問われた首相が「いつが適切なのか。諸般の情勢を総合して判断していく」と,含みを持たせて答えた上に記者団にニヤリと笑った事をどう説明するのか,と。この「ニヤリ」が弄んだとの批判を増幅させたのは紛れもない事実だ。
 ここでは一連の岸田の言動・所作をフェアに実証してみたい。結論を先に言えば,現在の岸田は一昨年10月に政権を立ち上げた時の岸田とは別人であるということだ。「地位は人をつくる」という諺があるように,笑みを絶やさず温和な岸田のイメージは過去のものであり,総理総裁を極めた岸田は今や駆け引きに長け,凄みすら感じさせる権力者に変貌した。自身は会期中の衆院解散見送りを決めていながら,与党幹部や首相周りからの探りに対し有無のどちらとも受け止められる曖昧な反応に終始した。
 一例を挙げる。岸田はこの間,政権を支える自民党の麻生太郎副総裁,茂木幹事長と5月15日夕(党本部),22日夕(党本部),26日昼(東京・丸の内の中国料理店「琥珀宮」),6月5日夕(党本部),13日午後(党本部)など3者会合を重ねてきた。それでも早期解散に否定的だった麻生,茂木にも言質を取られる発言は一切していない。さらに騒動鎮火後16日午後の紀尾井町・日本料理店「千羽鶴」での会食に至っても踏み切らなかった理由を語っていない…(以下は本誌掲載)申込はこちら