7月22日付 バイデンがウクライナ支援で岸田首相を大絶賛…それでも内閣支持率がまったく上がらなかった理由

「Let me start off by saying something that I hadn’t planned on saying. You know, I think there are very few people in Europe or in the continental United States, in the North American continent, that though this man would stand up and come to the aid and assistance of Ukraine. He increased his military budget. He stepped up — Japan — Japan — because he understood that when any part of the world has 185,000 people, soldiers it affects the whole world. I want to thank you again publicly.(初めに、予定していなかったことを言わせてください。欧州大陸や米国を含む北米大陸では、この人がウクライナを支援するために立ち上がり、助けるだろうと考えていた人たちは殆どいなかったと思います。彼は防衛予算を増やしました。日本は手を差し伸べました。なぜかと言うと、彼は、世界のどの地域であれ185,000人もの兵士が国境を越えて他の国の主権を奪うと、そしてそれが世界全体に影響を及ぼすと理解していたからです。公の場でもう一度、あなたに感謝したいと思います)」(米ホワイトハウスが東部時間7月12日午後4時31分に発表した「緊急リリース」から)言うまでもなく「この人(this man)」は岸田文雄首相であり、発言したのはジョー・バイデン米大統領である。12日午後(現地時間)、リトアニアの首都ビリニュスで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議2日目に主要7カ国(G7)首脳のウクライナ支援共同宣言が発表された。そしてこれは直後のバイデン演説の一節である。ここまで褒めそやされては岸田氏もこそばゆいのではないか。それはともかく、外交にますます自信を深めた岸田氏は14日昼すぎに欧州から帰国後、中1日の休養で16日早朝に政府専用機でサウジアラビア→アラブ首長国連邦(UAE)→カタールの中東3カ国歴訪に発った。
 そして19日午前に羽田空港到着という強行日程だった。この中東歴訪に日本企業約30社の幹部が経済使節団として同行したことが注目された。筆者がとくに関心を抱いたのは、岸田氏がサウジアラビア西部ジッダのアルサラーム宮殿で同国の最大実力者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(通称「MBS」)と会談したことであり、話し合われた中身である。▶︎

▶︎読売新聞(17日付朝刊)は「首相、エネ供給安定化図る―技術提供で体制整備」の見出しを掲げて、リードで次のように報じた。《ロシアによるウクライナ侵略でエネルギー情勢の先行きが不透明となる中、日本国内での中長期的なエネルギー安定供給体制に道筋をつける狙いがある》。 一般論としては確かに正しい。
 だが筆者は、首相のサウジ訪問の真の狙いを理解するためのキーワード「重要鉱物・レアアース」を挙げたい。その前段として日本経済新聞(12日付朝刊)が国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル事務局長を取材・報道した記事を紹介する。《EV(電気自動車)用モーターや風力発電タービンに使われる永久磁石(ネオジム)の生産に不可欠なレアアース(希土類)では世界の生産の68%、加工の90%が中国に集中している》というのだ。世界の「クリーンエネルギー(脱炭素)」へのシフトが進む中で、ここに来て重要鉱物市場における中国依存が際立っていることに改めて気づく。具体的にはリチウム、コバルト、レアアース、グラファイトなどの加工は中国がその65~100%近くを占める。経済安全保障の観点からも重要鉱物を供給する国の多様化が不可欠だ。遅まきながらも我が国の経済産業省を中心とする経済安保政策当局が「エネ供給安定化」に乗り出したのである。
 そして、日本・サウジ共同で脱炭素に欠かせないレアース鉱山開発の投資を推進することで合意したのである。経産省とエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)、サウジの産業鉱物資源省は重要鉱物に関する協力覚書(MOC)を締結する。一歩前進だ。不思議に思われるかもしれないが、レアアースの埋蔵量では北朝鮮が世界第2位である。同国は、実は希少価値金属(レアメタル)資源大国なのだ。帰国した岸田氏を待ち受けていたのは報道3社の最新世論調査の結果である。朝日新聞調査(7月15~16日実施):内閣支持率前月比5㌽減の37%、不支持率同4㌽増の50%。共同通信(同):支持率6.5㌽減の34.3%、不支持率7㌽増の48.6%。産経新聞・FNN合同調査(同):支持率4.8㌽減の41.3%、不支持率5.2㌽増の54.4%。国際社会で得た高い評価と外交成果で高揚感に浸ったはずの岸田氏は17日、滞在先のUAEの首都アブダビで支持率急落・不支持率急増を知らされて暗澹たる気持ちになったに違いない。