日米韓首脳会談はバイデン米大統領が「歴史的な機会」と語ったように後世の歴史家が高く評価する可能性がある。歴史を遡れば1978年9月の「キャプデービッド合意」(当時のカーター大統領が仲裁してイスラエルとアラブの盟主・エジプトの第4次中東戦争に終止符を打った)に匹敵するとの指摘もある。しかるに「大きな成果」があったと言えようか。だが、岸田文雄首相は現在の続落する内閣支持率の上昇を期待することはできない。G7広島サミットの成功とは違い通常の「首脳外交」で支持率上昇を手にすることはほとんどなかったからだ。
しかし、政治は待ってくれない。岸田首相は日米韓首脳会談後の同行記者団との会見で今秋に内閣改造を実施する意向を明らかにした。そのタイミングは、一部報道にあったように9月11日〜13日の間である。そして、永田町関係者の最大関心事は茂木敏充幹事長の去就である。一部に茂木氏が幹事長を外れて財務大臣に就き、森山裕選対委員長が就任するとの観測があるが、茂木氏の続投はほぼ間違いない。ここでは今秋政局のメインプレイヤーの度重なる会食を検証する。▶︎
▶︎すなわち、岸田首相、麻生太郎副総裁、茂木幹事長の3人のことだ。直近から過去3カ月前に遡ってみる。8月14日:麻生、茂木両氏が東京、赤坂のステーキ店「OYAIZU」で夕食。7月26日:岸田、麻生、茂木氏が六本木のANAインターコンチネンタル「花梨」で昼食。6月27日:岸田、麻生、茂木氏が銀座の「鮨あらい」で夕食。同16日:岸田、麻生、茂木氏がホテルニューオータニ「千羽鶴」で昼食。同5日:麻生、茂木氏が四谷の料亭「りゅう庵」で夕食。これほど頻繁に会食していることから、幹事長交代があるとは思えない。低空安定飛行の岸田政権は来年9月の自民党総裁選までは存続するのは疑いの余地がない。
なぜか。現在の野党はもとより、自民党内の反・非主流派が力技で岸田氏を総理・総裁の座から引きずり下ろすという気迫すら持ち得ていないからだ。その意味では、岸田氏は「ツキ男」である。首相官邸の住人からすれば「ツキも実力のうち」と言いたいところだろう。間もなく猛暑が去り、涼しい秋を迎えて政局はベタ凪である。日米韓首脳会談で「歴史的成果」を掌中に収めたと達成感に浸り、ほくそ笑む岸田氏の寝首を掻く「反乱分子」は見当たらない。安倍晋三元首相の言葉「あの温厚そうな表情が強みだね」を思い出す。