筆者は今、本稿を台湾・台北市内のホテル、オークラプレステージ台北で書いている。遅い夏休みで7年8カ月ぶりに台湾を家族3人で訪れた。台北入りした当夜、市内の「龍都西楼」で北京ダックを堪能した。翌日午前、台北(南港駅)から台湾高速鉄道で高雄(左営駅)に向かった。わずか1時間半だ。同夜は高雄の有名店「阿忠海鮮餐廳」で海鮮料理三昧。そして3日目夜の最後の晩餐は再び台北に戻った。予約が取り難い店として知られる「阿城鵝肉吉林店」で本格的なガチョウ料理を頂いた。
このように3日間の夕食メニューを並べると、贅を極めて相当額を浪費したと思われるだろう。 正直に書く。3度の夕食代総額は心遣い込みでトータル約8000台湾㌦(日本円で約4万円)。3人で海の幸、ジビエ料理など贅沢をしたが、常識外れの値段ではなかった。加えて、高級ホテルに宿泊した。だが、これまでのコロナ禍で貯め込んだクレジットカードのポイントで充当したのだ。 すなわち、台湾旅行は安上がりの3泊4日だったのである。▶︎
▶︎ここからが本題。8月31日、台湾の国防部は立法院(国会)に中国の軍事力に関する2023年版の年次報告書を提出した。その中に「習近平指導部は、習氏の中国共産党総書記3期目(2027年)のうちに台湾統一問題の解決(武力侵攻)を推し進める可能性があることは明らかだ」と記述されている。この報告書について、産経新聞(9月1日付朝刊)は次のように報じた。《習氏が昨年10月の党大会で任期5年の3期目に入り「権力をさらに集中させた」結果、「個人の意思が政策決定の指標となった」と台湾侵攻が習氏の独断で決定され得ると指摘した》。27年までに台湾有事出来の可能性が高いとの指摘は少なくない。
すでに本連載で言及した日本戦略研究フォーラムが行った「台湾海峡危機政策シミュレーション」(7月15~16日)は27年1月に中台情勢が緊迫したと想定するものだ。1月にフィル・デービッドソン前米インド太平洋軍司令官(海軍大将)が自民党本部で講演し、「27年までに中国の台湾侵攻の可能性は排除できない」と述べている。翌2月にはウィリアム・バーンズ米CIA長官がジョージタウン大学の講演で、習氏が27年までに台湾侵攻を成功させる準備を人民解放軍に指示したと語った。だが、夜の巷で会話した誰ひとり「2027年」に関心を向けなかった。これも台湾の現実である。