10月3日付「米国株推奨キャンペーン」驚くべき絶妙なタイミング 岸田首相の「資産運用立国」構想〝投資される日本〟に変貌できるか

岸田文雄首相は9月21日午後(現地時間・日本時間22日午前)、米経済界の大物が蝟集する会員制サロン「The Economic Club of New York(ニューヨーク経済クラブ)」で講演を行った。日米金融関係者の間で話題となった特区創設など「資産運用立国」構想を発表したのだ。
 その3日後の25日朝、日本経済新聞連載の辻原登の「陥穽―陸奥宗光の青春」を読もうと最終面(36面)を手にして、驚いた。米金融大手JPモルガン・アセット・マネジメント(AM)の広告(全面3分の1段)「アメリカの成長株投資のプロが選別した銘柄に投資」が目に飛び込んできたのだ。今夏以降、2回目である。JPモルガンAMの全く同じ広告が、筆者の記憶にある限り、昨年は7月4日、22日付朝刊を含めて4回掲載されている。米国株推奨のキャンペーンが昨年に続き、今秋も展開するようだ。驚いたのはその絶妙なタイミングである。岸田スピーチに耳を傾けた約200人の聴衆のなかでも金融関係者の超大物が際立った。同クラブ理事長のジョン・ウィリアムズNY連邦銀行総裁を始め、資産運用最大手ブラックロック、大手投資顧問会社ブラックストーン、有力投資ファンドKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)、世界的金融機関モルガン・スタンレーなどの最高経営責任者(CEO)、最高執行責任者(COO)や投資責任者らが出席。JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOこそ所用で欠席したが、もちろん日本投資責任者のJPモルガン証券の李家輝社長兼CEOは出席した。際立つタイミングはそれだけではなかった。▶︎ 

▶︎この日から10月6日まで政府と金融界は共同で、海外の投資家や資産運用会社を日本に招く「Japan Weeks(日本週間)」を開催した。初日の9月25日午後には東京・大手町の経団連会館で開かれた日本証券業協会主催の全国証券大会で挨拶し、「貯蓄から投資へのシフトを大胆に進めていく」と語った。会期中の10月5~6日はブラックロック主催で政府関係者と海外投資家の円卓会議を設営する。
 こうした一連の講演や投資イベントを通じて岸田首相が期待する「投資される日本」に変貌できるのだろうか。注目の「資産運用特区」は、東京、大阪、福岡、札幌の4都市による熾烈な招請合戦の様相にある。だが、28日の日経平均株価は3万1872円でその意気込みに冷水を浴びせたかのようだ。前日比499円安の大幅反落だった。