10月14日付 上機嫌な岸田首相だが…官民一体の「オールジャパン」構想は海外に本当に響いたのか

この10日間ほど、岸田文雄首相は極めて上機嫌だった。9月25日に初日を迎えた「Japan Weeks(ジャパン・ウィークス)」が大好評のなかで10月6日に幕を閉じたからだという。「海外の投資家や資産運用会社等を集中的に日本に招致し、国際金融センターの実現に向けた日本政府の関連施設や、日本の金融資本市場としての魅力等を情報発信するため、本年9月25日から10月6日を Japan Weeksとして、サステナブルファイナンス、貯蓄から投資への促進、資産運用立国等に関する各種イベントを、関係者と協力しつつ開催します」(金融庁のホームページから)。訪米した岸田首相は9月21日にニューヨーク証券取引所(NYSE)で行ったスピーチでも「この秋に、世界の投資家を日本に招聘するジャパン・ウィークスを展開する。皆さんにも、是非、参加いただきたい」と述べていた。そして盛りだくさんのイベントの中でも岸田官邸が最も気合を入れたのは10月5日夜に資産運用世界最大手の米ブラックロック(資産運用残高9.4兆㌦=約1300兆円)が主催した、東京・赤坂の迎賓館での国内外投資機関20数社の首脳を招いた夕食会だった。そもそもは来日したブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)が6月6日に官邸で岸田首相と会談した時に遡る。この席でフィンク氏から日本向け投資家を集めたイベント開催の提案があった。因みに同氏は昨年4月にも来日し、官邸で首相と会談している。ブラックロックが日本投資に積極的な証しである。
 では、その大型イベントの中身は?当夜の夕食会出席者リスト(非公開)を一瞥すると分かるが、これがまた凄いのだ。先ずブラックロック側から。ラリー・フィンクCEO以下、金融戦略投資グループのチャールズ・ハタミ・グローバル本部長兼中東責任者、ブラックロック投資研究所のトム・ドニロン理事長、レイチェル・ロード・アジア太平洋本部長、清水寛之北アジア本部長、有田浩之ブラックロック・ジャパン社長など8人。因みにドニロン氏の弟のマイク・ドニロン氏はジョー・バイデン米大統領の上級顧問である。▶︎

▶︎そして夕食会に招待された国内外の投資家は27人とラーム・エマニュエル駐日米大使。参加者をアットランダムに挙げると、次の通り。世界有数の投資会社KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)のスコット・ナトール共同CEO、カタール投資公社のマンスール・マフムードCEO、韓国投資公社のソンホ・ジンCEO、豪州フューチャー・ファンドのラファエル・アーントCEO、インフラ投資最強のグローバル・インフラストラクチャー・パートナーズ(GIP)のアデバヨ・オグンレシCEO、シンガポール政府系投資会社テマセクのロヒート・シパマラニCIO、資産運用大手ブラックストーンの日本法人ブラックストーン・ジャパンの重富隆介取締役会長、みずほフィナンシャルグループの木原正裕CEO、日本生命の清水博CEO、三菱UFJフィナンシャルグループの亀澤宏規CEO、三井住友銀行の高島誠会長、日本郵政ゆうちょ銀行の池田憲人社長――らである。
 そして日本側が岸田首相以下、西村康稔経済産業相、村井英樹官房副長官、保坂伸経済産業審議官、有泉秀金融庁金融国際審議官、堀本善雄総合政策局政策立案総括審議官、中山光輝首相事務秘書官(財務省)、伊藤禎則首相事務秘書官(経産省)の7人。このメンバーからも理解できるように、夕食会のロジスティックスを担ったのは有泉、堀本両氏、即ちFSA(金融庁)がお膳立てしたのだ。官民一体の「オールジャパン」で日本に投資を呼び込む。
 これこそ岸田氏が思い描く「資産運用立国」構想である。そのためには国際金融センター設置が不可欠であり、岸田氏は翌日夕に官邸で開かれた国内外の首脳とのラウンドテーブルでこう語った。「国際金融センターをめざす日本の変革への決意を感じ取っていただけたと確信している」。 果たして海外マネーを呼び寄せるため年末に予定される資産運用立国プランの具体策(運用特区のロジから税制改正まで多岐に及ぶ)を打ち出せのるか。まさに岸田首相のリーダーシップが問われているのだ。