10月21日付 進む”中国封じ込め”日本の将来の命運は「国家安全保障局」にかかっている

経済産業省(飯田祐二事務次官)は10月12日午後、本館17階の第一特別会議室で「経済安全保障に関する産業・技術基盤強化のための有識者会議」(座長:白石隆熊本県立大学理事長・京都大学名誉教授)の初会合を開いた。 出席したのは、<有識者>から白石氏、橋本和仁科学技術振興機構理事長(内閣官房科学技術顧問)、船橋洋一国際文化会館グローバル・カウンシル・チェアマン(元朝日新聞主筆)、竹中治堅政策研究大学院大学教授、遠藤典子慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授、江藤名保子学習院大学法学部教授の6人、<産業界>から有馬浩二デンソー会長、泉澤清次三菱重工業社長、大島眞彦三井住友銀行副会長、加藤敬太積水化学工業社長、國分文也丸紅会長(日本貿易会会長)、小柴満信Cdots 合同会社共同創業者、澤田純日本電信電話(NTT)会長、助野健児富士フイルムHD会長、森本典繁日本IBM副社長の9人の他、<オブザーバー>として内閣官房など関係各省庁幹部ら――。
 西村康稔経産相は同会合で「経済安保という考えが国力を左右し、国家の将来の命運を決めるといっても過言ではない」と述べた。その会議のなかで自説を開陳し多くを語ったのは、朝日新聞コラムニスト出身の船橋氏とNTTのトップでありイデオローグでもある澤田氏の2人だ。付言すれば、官僚側は内閣官房国家安全保障局(NSS。秋葉剛男局長・元外務事務次官)の高村泰夫内閣審議官(財務省)、飯田陽一内閣審議官(経産省)、外務省の片平聡経済局長、防衛装備庁の伊藤和己装備政策課長、財務省の下村卓也総合政策課安全保障政策室長、そして経産省の西川和見官房参事官経済安全保障室長ら関係部局幹部多数が出席した。▶︎ 

▶︎この有識者会議発足に連携するかのように同17日午前、東京・永田町の自民党本部で経済安全保障推進本部(本部長:甘利明元幹事長)は経済安全保障上の重要政策に関する提言案について意見交換を行った。有識者会議から始める。経産省官房経済安全保障室は同会議に向けて「経済安全保障に係る産業・技術基盤強化アクションプラン(たたき台)」(A4版20枚)を用意した。その内容をザックリ言えば、「3P」と呼ぶべき3つの柱とアクションを提示する。
 即ち、「Promote」「Protect」「Partner」の頭文字Pである。有識者会議の名称「経済安全保障に関する産業・技術基盤整」整備の重要性について、同アクションプランは次のように記述する。<●産業支援策(Promote)及び産業防衛策(Protect)を有機的に連携させながら、有志国・地域(Partner)とともに、国益を守るために一段踏み込んだ取組を講じることが求められている> 要は、経済安保に関する懸念と関心を有する国と協力し、共通の経済安保リスクからの自己防衛のため、サプライチェーンの強靭化及びイノベーション・産業基盤の強化を通じて競争力を高めようというのである。このアクションプランの中に「NSSを中心とした経済安全保障政策の方向性」と題された表題(P.4)がある。
 そこにも<経済安全保障政策を進めるための体制を強化し、同盟国・同志国等との連携を図りつつ、民間と協調して取り組む>と記されている。10月17日に北京で始まった中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」首脳会議のその日、米商務省は中国への先端半導体の輸出を巡る規制を強化すると発表した。規制の対象を45の国や世界各地の中国企業子会社に広げるものだが、標的が通信機器大手ファーウェイ(華為技術)であることは明らかである。“中国封じ込め”が進んでいるのだ。我が国の経済安全保障政策の立案・実施において、日増しに「NSS(国家安全保障局)」の存在感が飛躍的に高まっているのが分かる。NSSは安倍晋三政権下の2014年1月、67人体制で発足した(初代局長は谷内正太郎元外務事務次官)。3代目の秋葉局長は100人超体制を擁する。
 だが、「体制を強化」と言うものの、現状は米国家安全保障会議(NSC)と比べて予算規模・人員数はもとより法的整備と組織・システム改革の面で彼我の差がある。それゆえに、経済安全保障推進法の着実な実施と不断の見直しが求められるのだ。秋葉NSSにエールを送りたい。