10月31日付 東京発電の企業理念から誕生、片品川「水力発電所」は自然とのコラボだった 1泊2日の「仕事半分」ツアー

「秋の空 廓寥として影もなし あまりにさびし 鳥など飛べ」――。よく秋を詠んだ石川啄木の短歌である。 間もなく秋の紅葉が本格的に始まる尾瀬に行ってきた。気の置けない友人と一泊二日の「仕事半分」ツアーだった。10月21日に催された東京発電(木村公一会長)のぐんぎん尾瀬片品発電所(群馬県利根郡片品村)の竣工式に招かれたのだ。同発電所は片品村の急峻な地形と利根川水系片品川にそそぐ渓流「車沢」の水を活用した小型水力発電所である。その渓流の落差約176mを利用した同所を囲む豊かな森林にはカモシカやテンもいる。まさに自然と発電所のコラボだ。啄木の言葉廓寥(かくりょう)を広辞苑で引くと、「がらっとして、さみしいさま」とある。
 その廓寥とする山間に水力発電所を建設するという計画は、東京発電の企業理念「新しい価値を創造し、豊かで持続可能な社会づくりに貢献します」から生まれた。要するに、川の水が水車を回して発電し渓流に戻されるので、止まることはない。自然に優しいのだ。一例を挙げる。驚いたのは水力発電所の外観とその中身である。建築家の團紀彦氏が設計した全面真っ白な建物は森の中に優美な曲線を持つデザイン性の高いものだ。▶︎

▶︎一方、心臓部にある青色に塗られたペルトン水車と真っ赤な発電機はイタリアZECO社製である。ペルトン水車は、高所から発電所内に水圧管路で導かれた水を、噴射ノズルから強力な勢いで羽根車(バケット)に当てて回転させ、水車と連結した発電機を回し、電気を起こす。ぐんぎん尾瀬片品発電所(最大出力678kW・年間発電量約370万kWh)は、東京発電が開発と運営管理を担当、東京電力エナジーパートナーが実質再生可能エネルギー100%の電力を供給する。ここまで綴ってきた筆者だが、実は同発電所技術者から純国産クリーンエネルギー「水力発電」の仕組みについて、丁寧な説明を聞いても悲しいかな理解の外だった。
 ところで、東京発電の木村氏とは東京電力総務部長代理時代からの長い知己である。竣工式にはサプライズが用意されていた。それは恒例の神事(安全祈願から除幕式)や来賓挨拶(團氏、群馬銀行常務、片品村村長ら)後に、木村氏率いるバンド「モンキー&ベア」のコンサートであった。同氏の熱量はこちらにウエートがあったと疑うほどで、招かれたZECO社のゼルバロ社長夫妻や来賓、片品村民はサイモン&ガーファンクル曲に手拍子で応えていた。以上、「仕事半分旅」報告である。