さすがに岸田官邸は最新の共同通信(11月3~5日実施)とTBS系JNN(同4~5日)両社の世論調査の内閣支持率に接して魂消たに違いない。取り分け,TBS調査の内閣支持率は前月比10.5P減の29.1%,不支持率が10.6P増の68.4%で,支持が岸田文雄首相就任後過去最低であり,不支持は過去最高である。この支持10P下落,不支持10P上昇はとんでもない数字だ。
共同調査も凄い結果となった。内閣支持率は前回比4P減の28.3%,不支持率4.2P増の56.7%である。因って支持率「30%」を割り込んだのは時事通信(10月6~9日)26.3%,毎日新聞(同14~15日)25%,朝日新聞(同14~15日)29%,テレビ朝日「報道ステーション」(同28~29日)26.9%に加えて6社となった。世論調査でよく持ち出される故青木幹雄元官房長官が唱えた「青木の法則」(内閣支持率と自民党支持率の合計が50%を切れば時の政権維持が危険水域)に該当するのが,毎日の「25+23=48」と時事の「26.3+21=47.3」である。テレ朝調査では内閣支持率26.9%が自民党支持率38.3%を大幅に下回る珍現象まで起きている。言わば自民党支持者であっても岸田内閣では支持しないと烙印を押されたに等しい。
例えて言えば,現在の岸田政権はサッカーの試合で一発退場の「レッドカード」か,もう一回反則するとアウトの「イエローカード」に近い状況に追い込まれているのだ。政権末期とまでは言わないが,なぜここまで支持率が急落したのか。▶︎
▶︎いくら考えても,岸田政権が11月になってからの世論調査前に政策上で致命的なミスを犯した,とは思えない。先の内閣改造で起用した山田太郎文部科学政務官(参院当選2回・無派閥)の買春疑惑と柿沢未途法務副大臣(衆院当選5回・谷垣グループ)の公職選挙法違反疑惑による辞任,そこへ追い打ちをかけるように神田憲次財務副大臣(同4回・清和会=安倍派)の新たな税金滞納疑惑が「文春砲」の標的となった。確かに,相次ぐ政務三役の不祥事もあるが,昨年暮れの4閣僚辞任ドミノの時でさえこれほど酷い内閣支持率急落はなかった。であれば,いったい何が理由でかくも支持率大幅下落を招いたのか。
考えられる理由は唯一つ。岸田首相が「切り札」として打ち出した所得税減税である。支持率回復につながるどころか,逆に足を引っ張る形になっている。起死回生策も手詰まり状態で,この先もじり貧が続きそうだ。
事実,『読売新聞』と『朝日新聞』は(共に9日付朝刊)一面トップで其々「年内解散見送りへ―首相,経済対策に専念―来秋の総裁選前狙う」,「首相年内解散見送り―支持低迷,経済に集中」と報じた(因みにNHKも同日早朝の番組「おはよう日本」の中で同趣旨を報道)。一方,奇しくも『読売』は9年前の全く同じ日(11月9日朝刊)に安倍晋三政権下の第47回衆院選挙(12月14日施行)について「年内解散へ」とスクープを放っていた事が想起される。こうして10月20日に招集した秋の臨時国会に合わせた衆院解散・総選挙の可能性を探り,様々な布石を打ってきた岸田もさすがにこの支持率低迷に年内解散見送りを決断せざるを得なかったのだ…(以下は本誌掲載)申込はこちら