紙ワシントン・ポスト、英紙フィナンシャル・タイムズなど欧米の有力紙が報じる最新のウクライナ情勢分析に接すると気が重くなる。両紙が一致して指摘するのは、ウクライナ軍が6月に始めた領土奪還に向けた反転反攻が行き詰まっていることだ。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と軍トップのワレリー・ザルジニー総司令官との間の意見対立はもとより、ロシアが併合・実効支配した東部と南部4州での軍事作戦の不首尾が指摘されている。
そうした中で、ウクライナが待望する米戦闘機F16(ロッキード・マーティン社製の第4世代戦闘機)の欧州訓練センターが、11月13日にルーマニア東部のフェテシュティ空軍基地に設置された。当初はオランダがF16戦闘機18機を提供し、米国を中心に北大西洋条約機構(NATO)加盟の「戦闘機連合」(オランダ、デンマークなど11カ国)がウクライナ空軍パイロット育成を担う。来年以降、ベルギー、ノルウェーなども供与する意向を明らかにしている。その狙いは、ウクライナ空軍を旧ソ連式からNATO基準に転換させることにある。すなわち、ウクライナ戦争の長期化を前提にしているのだ。一方で地上戦の兵器では10中旬、ウクライナ軍は米国から供与された長射程の地対地ミサイルATACMSを初めて対ロ戦闘で使用した。最大射程300kmを射程165kmミサイルに改修したものだ。このように米製F16戦闘機やATACMS供与が実現したのは、実は米国防総省の人事と決して無関係ではない。▶︎
▶︎今夏、同省ナンバー3のコリン・カール国防次官(政策担当)が退任、後任にデレク・ショレ顧問が昇格した。バイデン副大統領時代の副大統領補佐官(国家安全保障担当)を務め大物次官とされたカール氏は一貫して最新鋭兵器のウクライナ供与に慎重であり、ATACMS、戦車エイブラムスだけでなく、F16戦闘機供与に最後まで反対した経緯がある(F16の直接供与はしない)。
次に、我が国のウクライナ支援の現状である。当然ながら武器支援はできない。岩田和親経済産業副大臣と辻清人外務副大臣が20日にウクライナの首都キーウでデニス・シュミハリ首相と会談した。両氏にはウクライナ復興に関心が高いIHI、日本工営など日本企業10社幹部が同行。来年2月に東京で開催される「日ウクライナ経済復興推進会議」に向けて協議した。日本の支援は限られているが、官民連携の復興・再建ビジネスに傾注することは国益に適うのだ。