自民党最大派閥安倍派(清和会)の政治資金パーティーを巡る裏ガネ疑惑は底なし沼化している。トリガー(引き金)となったのは『朝日新聞』(12月1日付朝刊)一面トップのスクープ記事「安倍派 裏金1億円超か,東京地検特捜部―パー券不記載立件視野―ノルマ超分 議員に還流」である。この記事そのものが岸田文雄政権と自民党執行部にとってマグニュチュード8級の激震だった。
その後,『読売新聞』(7日付朝刊)の「パーティー収入,還流『事務総長に報告』―安倍派会計担当,検察に説明」,『朝日』(9日付朝刊)の「安倍派6幹部 裏金か―塩谷・松野・高木・世耕・萩生田・西村の各氏,1千万超~100万円」,『読売』(同)の「松野氏更迭へ―パーティー裏金疑惑―首相,後任調整進める」と,今般の裏ガネ疑惑報道は両紙の独断場である。そもそも昨年11月に『しんぶん赤旗』(日曜版)が自民党各派の政治資金パーティー収入(2018~21年)で約4000万円もの不記載があったと報じ,さらに今年11月初め神戸学院大学の上脇博之教授が政治資金規正法違反(不記載・虚偽記載)の容疑で自民5派閥の会計責任者らを東京地検に刑事告発していた(「読売」11月2日付朝刊のみ報道)。
こうしたこともあり,「朝日スクープ」直後から東京地検特捜部が1988年6月に発覚したリクルート事件捜査に匹敵する総動員態勢で内偵しているとの情報はあった。同事件は国鉄・電電公社民営化を実現した中曽根康弘政権の民活路線に擦り寄るためリクルート創業者の江副浩正が傘下のリクルートコスモスの未公開株を政・官・財界要路にバラ撒き,東京地検特捜部によって贈収賄容疑で立件された汚職事件。当時の捜査体制は,東京地検の吉永祐介検事正,松田昇特捜部長,宗像紀夫主任検事の指揮ライン下で①労働省ルート②文部省ルート③NTTルート④株譲渡解明(政界ルート)の4班で構成成された。強制捜査着手の第1弾はどのルートなのかに注目が集まったが,リクルートが発行する就職情報誌への行政上の便宜(会社訪問解禁問題など)を図った当時の加藤孝労働事務次官からの着手に関心が集中していた。▶︎
▶︎だが,いきなり本丸とされたNTTルートの齢80歳超の真藤恒前会長が逮捕された。当時の東京地検特捜部も主に「朝日」と「読売」に捜査情報をリークしたことから,今回もこれだけリークが続くと「いきなりバッチ」の可能性があるのではないかと,マスコミ各社の司法記者の間で疑心暗鬼が募った。
というのも,安倍派がパーティー券販売のノルマ超え分を派閥及び個人の収支報告書に収入として不記載(キックバック)にしてきたのは悪質に過ぎるからだ。「読売」(9日付朝刊)はこう書いている。<検察幹部は「問題はキックバックではなく,それを収支報告書に記載していないということだ」と指摘。「裏金化は政治資金を透明化するという法の趣旨に反する行為」とし,派閥として組織的,継続的に行われてきた点が悪質との見方を示す>。事実,本誌は安倍派(清和会)が1997年頃の三塚派時代から①議員側が専用口座を作り,パーティー券に振込口座を記した紙を同封②配布先に「振込はこちらにお願いします」と依頼③その口座に振り込まれた額の半額を清和会に入金④それでもパー券に表示されている振込口座に入金する人もいるので,それについては清和会から当該議員に電話連絡があり,後日,清和会からその議員の取り分が入金される⑤清和会には議員の販売分の半額だけが記録として残る―というのが常態化しているとの指摘を得ている…(以下は本誌掲載)申込はこちら