日本銀行(植田和男総裁)は12月18~19日に政策決定会合を開催する。この間、東京為替・債券市場関係者の関心を集めているのはマイナス金利(NIR)の解除に踏み切る可能性である。結論を先に言えば、解除は遅くても来年4月会合で、常識的には1月会合であろう。
一時期、12月会合でのNIR解除説が流布されていたのは事実だ。だが、後付け講釈と言われそうだが、そもそも12月は自民、公明両党の税制調査会が2024年(令和6年)度税制大綱案をまとめるなど財政政策論争が白熱する時期で政治配慮が求められる。一方で、安倍晋三元首相とは異なり、岸田文雄首相は金融政策を以て何か事を達成したいと考えていない。換言すれば、岸田政権はすでに日銀がNIRを解除しても構わないと判断しているということである。直近の日銀幹部発言が話題となった。
先ず、氷見野良三副総裁(元金融庁長官)は12月6日、大分県金融経済懇談会後の記者会見で、金融緩和政策の「出口戦略」について具体的な順序に言及せずに「スケジュールを決めるより何が起こっているのか虚心坦懐に見ていく」と述べた。そして植田総裁は翌日の参院財政金融委員会で、「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と述べた。▶︎
▶︎この「年末」が改めて12月NIR解除の臆測を呼んだ。「チャレンジング(挑戦的)」というワーディングは総裁就任会見で、「デフィカルト(難しい)」というニュアンスで使われたのであり、立憲民主党1回生議員が質問の中でその「チャレンジング」を引用したため植田氏は自然と口にしたのである。
要は、意図的な政策シグナルではなかった。重視すべきは、むしろ氷見野氏発言だ。その趣旨は要約すると以下の通り。日本がデフレから脱却することは最終的にプラスになり、金利上昇に伴う痛みは、移行期を適切にリスク管理することが前提となるが、プラス分で吸収できる――というのである。平たく言えば、NIR解除に向けて金融機関を含む市場関係者すべてがこれまでの異次元金融緩和時代にさぼった出口戦略に向けた人材育成から専門知識を取り戻すための準備期間を与えるということ。中立金利と思われる水準に向けて少々早めのタイミングで徐々に正常化に舵を切るのだ。そんな折り、自民党安倍派のパーティー券収入裏金疑惑が発覚。金融緩和路線継続に固執する同派が金融政策に介入する力はもはやない。となると、1月のNIR金利解除だ。