不覚にもつい最近まで「日本社会と民主主義の持続可能性を考える超党派会議」なる組織の存在を知らなかった――。
自民党、立憲民主党、公明党、日本維新の会、国民民主党は1月24日、各党代表世話人会を開き、テーマ別4部会の編成・運営方針、共同座長などのメンバー人選を承認・決定した。先ず、代表世話人会メンバー。自民党代表世話人(各党筆頭代表世話人):小渕優子選対委員長、自民党世話人・幹事:木原誠二幹事長代理、立憲民主党代表世話人:大島敦企業・団体交流委員長、公明党代表世話人:伊藤渉政調会長代理、日本維新の会代表世話人:藤田文武幹事長、国民民主党代表世話人:古川元久国対委員長。この4つの部会は、第1部会「統治構造・政治改革」、第2部会「経済・財政・社会保障」、第3部会「人口減少・地域・国土構想」、第4部会「科学技術・イノベーション」で構成されている。
超党派会議の85人メンバーリストを吟味して筆者が関心を持ったポイントを幾つか挙げる。①自民党派閥の政治資金裏金疑惑の究明と政治刷新が求められるなか「統治構造と政治改革」を看板に掲げた第1部会の自民党メンバーは?②なぜ小渕氏が各党筆頭代表世話人に選出されたのか、そして誰(どこ)が同氏に打診したのか?③同会議のスポンサーは誰(どこ)なのか?④今春から夏にかけての政局と関係があるのか? 第1部会には共同座長の木原幹事長代理(衆院当選5回・旧岸田派)、同事務局長の小倉将信前少子化担当相(4回・旧二階派)、そして自民メンバー9人に齋藤健経済産業相(5回・無派閥)、小林史明元デジタル担当副大臣(4回・旧岸田派)の名前がある。 第2部会メンバーに鈴木馨祐政調会副会長(5回・麻生派)、第3部会メンバー神田潤一(1回・旧岸田派)、第4部会は事務局長の大野敬太郎総務副会長(4回・無派閥)、同メンバーに小林鷹之前経済安全保障相(4回・旧二階派)、塩崎彰久(1回・旧安倍派)が名を連ねる。岸田文雄首相(総裁)最側近の木原氏を筆頭に鈴木、小林両氏も旧大蔵省(現財務省)出身、齋藤氏は旧通商産業省(現経済産業省)、小倉、神田両氏が日本銀行出身。大野氏は父の功統氏が元防衛庁長官であり、父・母方の祖父が共に政治家一族である。
そしてニューヨーク州弁護士出身の塩崎氏の父・恭久氏は安倍晋三政権で官房長官、厚生労働相を歴任している。皆が超エリートなのだ。そして将来を嘱望される自民党の中堅・若手がこの超党派会議に蝟集している。▶︎
▶︎では、いったい誰(どこ)の肝いりでこの会議が発足したのか。日本生産性本部会長の茂木友三郎キッコーマン名誉会長、同副会長の小林喜光東京電力ホールディングス会長、佐々木毅元東大総長、増田寛也日本郵政社長が共同代表となって2022年6月に発足した令和国民会議(令和臨調)である。令和臨調は先の4人の共同代表以下、10人の運営幹事、そして経済・学界(元官界も含む)からの会員102人で構成される。令和臨調の事務局は日本生産性本部内に置かれているが、同本部の前田和敬理事長が与野党国会議員有志の超党派会議との連携構築、さらには今後の基本方針までの絵図を描いているというのだ。同会議4部会発足直前の年初1月11日、令和臨調は自民党派閥による政治資金問題を受け、政党改革を起点とした令和の「政治改革大綱」策定を求める共同声明を公表している。
一連の動きを筆者流に解釈すれば、令和臨調がエンドースする自民党中堅・若手に同党の政治刷新を託すマシーンとしてこの超党派会議を位置付けているのではないか。そのトップに臨調幹部の期待を集める小渕優子氏、準トップに岸田首相の懐刀である木原誠二氏が就いたということが興味深い。そして同会議を自民メンバーとして支える政策エリートが旧岸田派、旧大蔵省出身に多いこともまた示唆するところ大である。政局絡みの印象を抱くのは筆者だけではあるまい。首相(総裁)主導の政治刷新本部の“政治利用”との声が上がりそうだ。
ともあれ歴代首相では安倍、中曽根康弘両氏を高く評価する茂木友三郎氏は岸田氏が発信力に欠けるとの不満を抱いているとされる。いずれにしても、各部会の初会合は3月中に開催が予定されている。その後、毎月2回程度の頻度で行われるが、しかも原則として平日夜19時または20時前後から90分程度開催すると決めている。こうした運営方針からも超党派会議に集まる自民党新世代がやる気満々であることだけは間違いないようだ。