4月10日午前(米東部時間)に首都ワシントンのホワイトハウス(WH)で行われた岸田文雄首相とジョー・バイデン大統領の日米首脳会談の詳細で不明な点がある。先例を検証する。2023年1月13日午前11時30分(現地時間)の日米首脳会談は少人数会合約45分間、テタテ会合(通訳のみ)約15分間、拡大会合(ワーキングランチ)約60分間で、計約2時間だった。外務省は会談後、その内容、会談時間などにつて同行記者団にブリーフする。日程は直前に霞クラブ(外務省担当)に通告する。同8月18日午前11時30分(同)にワシントン郊外のキャンプデービッド(大統領山荘)で行われたのは日米韓首脳会合だった。メディア・オフリミットの3首脳会合についての情報は極めて限られた。3首脳会合約60分間及び少人数会合(ワーキングランチ)約60分間である。当時、筆者は拡大会合直後に各8人の出席者及び席次情報を入手し、報じている。
では、今回はどうだったのか。岸田首相の日程(詳細でなく概略)は霞クラブに通告され、11日午前(現地時間・日本時間12日未明)の米議会首相演説草稿(英文)は8日夕の首相一行の出発前日に同行記者に限定配付された。そして実際の首脳会談の建て付けは……。10日午前10時から国賓の岸田首相夫妻の歓迎式典がWHサウスガーデンで催された。日米双方の主要閣僚、補佐官、外交官の他、両国関係者約200人が招かれた。その後、同10時50分から約30分間の少人数会合、同11時25分から約55分間の拡大会合の開催を日米が同時発表した。そして米側はWH記者会に拡大会合出席者リスト(プロトコル順)を提示した。
だが、少人数会合出席者の名前は明かされなかった。日米出席者は以下の通り(両首脳を除く)。米側:ブリンケン国務長官、オースティン国防長官、レモンド商務長官、サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)、ブレイナード大統領補佐官(経済担当)、ジャンピエール大統領報道官、ポデスタ大統領上級顧問、キャンベル国務副長官、エマニュエル駐日米大使、ラップフーパーNSC東アジア・オセアニア担当上級部長、チャブラNSC技術安全保障担当上級部長、コリンNSC東アジア担当部長の計12人。日本側:上川陽子外相、齋藤健経済産業相、村井英樹官房副長官、秋葉剛男国家安全保障局長、山田重夫駐米大使、嶋田隆首相首席秘書官、船越健裕外務審議官(政務)、芹澤清防衛審議官、大鶴哲也首相事務秘書官、有馬裕北米局長の計10人。▶︎
▶︎冒頭で筆者が不明な点がある、と記したのにはもちろん理由がある。5~6日の外交当局及び官邸関係者への取材で、「最終調整に手間取っている。恐らく少人数会合ではなく極少数会合になる」と聞いていたのである。事実、極少数会合となった。非公表だが、日本側が岸田首相、上川外相、秋葉国家安保局長、米側はバイデン大統領、ブリンケン国務長官、サリバン大統領補佐官で、日米双方3人のまさに極少数会合である。
この面子から分かるのは、日米首脳会談の最重要テーマはやはり日米外交・安保協力の強化ということに尽きるだろう。それは日米共同声明のタイトルが「未来のためのグローバル・パートナー(Global Partners for the Future)」となったことからも窺える。日米同盟がインド太平洋地域の平和・安全・繁栄の礎となるという認識で一致、そのための防衛・安保協力強化を確認した。その上で、尖閣諸島を含む東シナ海での中国の力による一方的な現状変更の試みへの強い反対を再確認。さらに南シナ海南沙諸島における中国の最近の緊張扇動の海洋活動を国連海洋法条約(UNCLOS)違反とした。それはこれまでに構築した日米韓連携の次に来る日米比連携となり、11日午後の岸田・バイデン・マルコスの日米比首脳会合として結実した。
だが、米側報道にそれほど熱量が感じられないのが気掛かりだ。ロイターとブルームバーグの通信2社とニューヨーク・タイムズ紙がネットの一面、あとは英紙フィナンシャル・タイムズぐらいである。岸田氏が訪米前に取材を受けた米CNN、米公共放送PBS、 米紙ワシントン・ポストはどうなったのか、筆者はそこまでカバーできていない。