日米首脳会談は4月10日午前(米ワシントン時間)、ホワイトハウスで開催された。その後に発表された共同声明のタイトルは「未来のためのグローバル・パートナー」である。その骨子は、日米及び世界のために、諸課題に対処し得るグローバルなパートナーシップを構築すべく、あらゆる領域・レベルで協働する――。
諸課題とは、日米で中国を念頭に置く半導体・脱炭素・安保政策に関わるテーマである。平たく言えば、日米二国間同盟をより強固なものにするということだ。際立つのは、防衛・安保協力の強化である。分けても、米側がパートナーである日本を高く評価するのは、防衛予算のGDP(国内総生産)比2%への増額、反撃能力の保有、自衛隊の統合作戦司令部設置を含む日本の防衛力抜本的強化の取組だ。改めるまでもなく、岸田政権が2022年12月16日に閣議決定した安保関連3文書改定が、その根底にある。
そして23年度から5年間の防衛費総額43兆円が決まった。加えて反撃能力(敵基地攻撃能力)保有のために25年度から米国製巡航ミサイル「トマホーク」を導入する。実際、自衛隊配備のため米軍による運用訓練(座学)が3月下旬に始まった。こうした日米連携強化の念頭にあるのは、もちろん台湾有事である。▶︎
▶︎ところが、憂慮すべき新たな「有事」が表面化した。南シナ海南沙諸島のセカンド・トーマス礁を巡る中国とフィリピンの緊張激化のことだ。本来は中比両国に領土問題は存在しない。国連海洋法条約は、フィリピンが同諸島に対する法的主権を有すると裁定しているからだ。付言すれば、セカンド・トーマス礁は同国の排他的経済水域(EEZ)内にあり、かつ実効支配してきた。中国は沖縄県石垣市の尖閣諸島周辺海域で度重なる領海侵犯を行ってきた。それ同様、いやそれ以上の過激な挑発を繰り返しているのだ。
ニュース映像からもフィリピン船舶に対する示威行動は目に余る。しかし、実効支配の弱体を目指す中国は止めることはない。理由は唯ひとつ。ドゥテルテ前大統領が習近平政権による対比投資拡大に飛びつき対中融和策にカジを切ったことだった。
だが、そのまやかしを看破しマルコス大統領は対米、対日連携に転じた。そして現在の中比一触即発を招いた。ともあれ4月11日の日米比首脳会談が実現した。結果、日米韓同様に日米比安保連携も強固なものとなったのである。