11月5日の米大統領選まで6カ月を切った。民主党のジョー・バイデン大統領と共和党のドナルド・トランプ前大統領が戦う4年前と同じ構図となったが、最近の新聞や雑誌に「もしトラ」や「ほぼトラ」と決めつける予想記事が際立つ。それでも米リアル・クリア・ポリティクスが集計した5月1日時点の世論調査の平均によると、支持率はバイデン氏が45.1%、トランプ氏が46.6%と拮抗する。そして4つの刑事裁判を抱えるトランプ氏は、機密文書を不適切に取り扱ったとされる問題の裁判では公判の無期限延期が決まり安堵した。
一方、不倫の口止め料を不正に処理したとして罪に問われている裁判では不倫相手のポルノ女優が詳細な証言をしたことから改めて多大なダメージを受けた。“お騒がせトランプ”は健在である。それが大統領選にどれだけ影響を与えるのか、その予測は難しい。バイデン氏を「史上最悪の大統領」とトランプ氏は断じ、同氏を「憲法を蹂躙する独裁者」とやり返すバイデン氏。両氏の非難応酬こそが「実は米国の脅威だ」との指摘もあるなかで興味深い記事に接した。 ▶︎
▶︎英紙フィナンシャル・タイムズ(4月30日付)の記事「The lesson of Biden’s transformational first term—Eloquence and charisma are vastly overrated in politics(バイデンの変革第一期の教訓―雄弁さとカリスマ性は政治において過大評価されている)」 同紙の国際政治コメンテーターであるジャナン・ガネシュ氏の結論は「バイデン政権は弁舌巧みではない偉大な政権と言える」と評価する。記事中では歴代の民主党政権を引き合いに出して暗殺されたJ・Fケネディ大統領を引き継いだリンドン・ジョンソン元大統領を挙げて説明した。そのうえで「(リベラル派の雄弁さの象徴であるバラク・)オバマ氏はバイデン氏にとって、ジョンソン氏にとってのケネディ氏のような存在なのだ」と記述している。
筆者は常々、ナイジェリア出身英国人で弱冠42歳のガネシュ氏の分析を精読している。かつて同氏はトランプ氏と中国の習近平氏の共通項が「恨み」であると看破した。自分が尊敬されるべき対象として認められていないことに不満を抱いているが、西側諸国のエリートにはこの感情をなかなか理解できないだろうと指摘する。至言だ。さて、激戦7州の中でバイデン氏の地元・東部ペンシルベニアでもトランプ氏は1㌽上回る。やはり、バイデン氏劣勢ということなのだろう。