先週6月6日夜、菅義偉前首相、加藤勝信元官房長官、萩生田光一前自民党政調会長、武田良太元総務相、小泉進次郎元環境相が東京・麻布十番の寿司店「おざき」で会食した。「反岸田連合の旗揚げか!」と、マスコミ各社の政治記者は気色ばんだ。そう思われても何ら不思議ない。菅氏の“岸田嫌い”は筋金入りだ。解体を余儀なくされた旧安倍派の萩生田氏も本音はほぼ同じ。旧二階派の武田氏も根強い反発を抱く。もともと温厚な加藤氏は力づくの「岸田おろし」に動くタイプではない。
だが、永田町で「KHT」と呼ばれる加藤、萩生田、武田氏の中で唯一の次期総裁候補と目される。行動を共にせざるを得ないという心情であろう。通常国会閉会後夏にかけて、この「KHT+菅」が反岸田を鮮明にするとしても、政治資金規正法改正案を巡り岸田氏との間に大きな亀裂が生じた麻生太郎副総裁・茂木敏充幹事長ラインとの間合いをどうするのか。麻生、菅氏の関係は岸田、菅両氏の関係同様、というよりそれ以上に良くない。「KHT+菅」が「麻生・茂木」と連携して岸田氏を引きずりおろすシナリオにはリアリティがあるとは思えない。▶︎
▶︎それにしてもだ。早くも永田町で流布されたが、岸田文雄首相の解散権が封じられて9月の自民党総裁選が地方党員・党友を含むフルスペックで実施される場合のシミュレーションは必要である。その前提は2つ。①は岸田氏が出馬・再選を断念するケース。現状では石破茂元幹事長、上川陽子外相、高市早苗経済安全保障相、加藤氏らが名乗りを上げるはずだ。そして、次期総裁(首相)は衆院選で集票力が期待できる「顔」が求められる。でなければ、選挙に自信がない当選4回生以下は戦えないと言う。
仮定の話を重ねる。仮に7月7日の東京都知事選で無所属候補の蓮舫氏が当選すると、都政を国政に連動させて政権交代を目指すため秋の臨時国会衆院本会議の首班指名選挙で立憲民主党の野田佳彦元首相を担ぐと国民にアピールする。立民も9月に代表選がある。そこで次期代表が泉健太現代表でなく野田氏に代わった場合だ。自衛官の父の下で育ち、松下政経塾一期生の野田氏は立民にあっても生来の保守政治家である。では、自民・公明与党候補が誰であれば野田候補に勝利できるのか。最後は、小泉氏を担ぐしかないという声が出てくるのではないか。しかし、父・純一郎元首相は「早すぎる」とダメ出しする。そこで前提②の岸田氏も参戦である。首相周りは勝てると自信を持つが、如何なものか。