「私自身は四面楚歌であるとは感じていない」――。
6月19日午前,国会議事堂本館衆院第1委員室で3年ぶりの党首討論(QT)が開かれた。岸田文雄首相は政治資金規正法改正案を巡り与党の公明党,野党の日本維新の会との修正協議で迷走を続けたことについて,国民民主党の玉木雄一郎代表が「……自民党内からも首相の責任を問う声が出ている。
四面楚歌,八方ふさがりだ」と指摘すると,こう反論した。「四面楚歌」は国語辞典『大辞泉』(小学館)を引くと,<どの方面にも差し障りがあって,手の打ちようがないこと>とある。さしずめ現下の岸田は自分を取り巻く四方面いずれにも差し障りがある,と指摘されたのだ。平たく言えば,周囲すべてが敵や反対者で孤立して,助けや味方がいないことだ。そのうちの一つが自民党の地方組織からの厳しい岸田批判や首相の退陣論である。それは朝日新聞が全国の自民党47都道府県連の幹事長宛に行ったアンケート調査の結果に表われている(同紙23日付朝刊報道)。9月以降も岸田総裁の続投(再選)を望むかとの問いに「はい」と答えたのは3県(広島,茨城,福岡)で,「いいえ」が5県(岩手,岐阜,静岡,愛知,岡山)であり,「わからない」は8府県(神奈川,新潟,京都,鳥取,鹿児島など),「その他」と無回答は31都道府県だった。▶︎
▶︎奇しくも報道前日に北海道旭川市で開かれた党会合で市議・道議出身の東国幹衆院議員(当選1回・旧茂木派)が「ゆめゆめ再選などと軽々しく口にせず思いとどまって欲しい」と述べたことは象徴的である。岸田にとって残る三方面の二つ目は,改正政治資金規正法の成立の過程でこれまで後見人であり続けた麻生太郎副総裁軽視と言える独断専行によって同氏を怒らせて,関係修復が容易ではない状況に陥っていることだ。両者の間の亀裂は深い。次の面は,言うまでもなく内閣支持率の低迷と自民党支持率の下落である。
最新のメディア各社の世論調査は以下の通り。読売新聞調査(6月21~23日実施):内閣支持率前回比3P減の23%,不支持率1P増の64%,自民党支持率2P減の25%。毎日新聞調査(22~23日):内閣支持率3P減の17%,不支持率3P増の77%,自民党支持率1P増の18%。岸田が通常国会会期内成立に固執した改正規正法について,「読売」調査で「評価する」は34%で,「評価しない」56%が大きく上回った。払った代償が大きかっただけに岸田官邸は深刻に受け止めている。そして四つ目の面が自民党内から噴出した政治手法を含む首相批判である。これまでに本誌は指摘しているが,温和な顔付きとは異なり岸田は伝えられている以上に頑固であり自己チューである。加えて,総裁再選への思いは揺るぎの無いものがある…(以下は本誌掲載)申込はこちら