「白いキツネと緑のタヌキ」の戦いとなった東京都知事選はタヌキに軍配が上がるのは確実だ。直近のメディア世論調査で、現都知事の小池百合子氏(71)が前立憲民主党参院議員の蓮舫氏(56)に10ポイント以上の差をつけている。選挙情勢記事の見出しで言えば、調査数字で0~5P差が「接戦」▽5~10P差「一歩リード」▽10~20P差まで開くと「先行」が相場観となる。想定外の逆転劇が起こらない限り、小池氏の優位は揺るがない。
拙稿は締め切りの都合で七夕投開票日前の4日に書いている。根拠にしているのは各メディア世論調査のデータと選挙アナリストから得た予測だけ。選挙は何が起きるか分からない。開けてビックリ!もし間違っていたらご免なさいと謝るしかない。ただ筆者の予感では、午後8時の投票終了と同時に「当確」を打ってくるメディアがありそうだ。ほぼ間違いなくNHKだろう。選挙報道は「2番目ではダメ」らしく、早打ち競争に精を出す。 小池勝ち・蓮舫負けの前提に立って論を進める。
勝因は二つ、一つは、有権者が「変更」を望まなかったことだ。当たり前過ぎるが、可もなし、不可もなしの首長は変える理由にならない。スキャンダル発覚や悪政を敷かない限り、現職首長が強いゆえんである。過去、都知事選は現職が負けたためしがない。二つ目は、小池陣営の「ステルス戦術」がはまった。「公務」優先と称して、街頭から姿を消した。自分の選挙より大事な「公務」などあろうはずがない。ちなみに、小池氏は腹心が立候補した先の目黒区長選や衆院東京15区補選で、公務をほったらかしにして何度も街頭応援演説に入っている。蓮舫氏と同じ土俵で相撲を取りたくなかっただけである。15日間の大相撲に例えるなら、不戦勝を重ねて勝ち越したわけだ。蓮舫陣営によれば、ほぼ全ての在京民放テレビ局から討論会オファーがあったそうだ。だが、小池氏が「公務」を理由に逃げて、一度も実現しなかったという。政治家としての小池氏は右派ポピュリストに色分けされる。左派ポピュリストの代表がれいわ新選組の山本太郎代表だ。世界的なポピュリズムの時流に乗っているが、ポピュリストの本質は大向こう受けするパフォーマンスである。学歴詐称疑惑を抱える小池氏は、討論会で質問が集中して右往左往する姿をさらけ出すことに矜持が許さなかったのだろう。▶︎
▶︎翻って、蓮舫氏の敗因は「風呂敷」を広げ過ぎたことだ。立候補の会見で「反自民・非小池」を掲げた。国政選挙の補選では有効だったキャッチコピーも都知事選では通用しない。都知事選は知名度の高い人による「人気投票」の色合いが強い。政党色を打ち出すと、無党派層が鼻白む。読売新聞・日テレの中盤情勢によると、無党派層の支持は小池3割、石丸伸二2割、蓮舫1割だ。今、蓮舫氏は「2位ではだめなのでしょうか」とつぶやいているかもしれない。早ければ年内にも予想される解散・総選挙で東京の選挙区から出馬して当選すると、女性宰相への道が閉ざされたわけではない。4年後、後期高齢者に突入する小池氏に比べると、首相への距離は、負けてむしろ縮まるという皮肉な結果になる。 前安芸高田市長、石丸氏がプチ・ブームを起こした。NHK選挙班が4日に行った票読み会議で、小池氏258万票、石丸氏158万票、蓮舫氏114万という数字が出たとされる。囁かれていた2位と3位の予想が入れ替わる可能性が現実味を帯びた瞬間だった。以前から、石丸氏の歯に衣着せぬ発言がネットで注目されていた。1日に10カ所以上の街頭演説をこなし、小池氏とは真逆の戦術で現状を変えそうな期待感が集まった。投票率が上がった場合(55%超)は上がった分ほとんどが石丸氏に流れると見込まれる。大げさに言えば「保守」対「リベラル」と別の対立軸「既成」対「新興」が生まれて来そうな感じ。
平たく言えば、カップ麺に食べ飽きたから初メニューの広島風お好み焼きでもつまみ食いしようか、という構図である。チが悪い夏風邪の直撃を受けたため、都知事選と同日実施の9都議補選の取材ができませんでした。このうちの7都議補選は国政に直接影響を与えるので次号で言及したいと思う。色はともかくキツネ、タヌキは人を騙す、とされる。♪小池にはまってさあタイヘン とならぬよう褌を締めてかかろう。