自民党総裁選レースは告示の9月12日を前にして、小泉進次郎元環境相が早くも頭ひとつ抜け出た感が強い。確かに、人気もあり見た目もいいし華がある。
だが、衆院当選5回で要職も環境相しか経験していない。実力に疑問符が付けられている。それでも父が「自民党をぶっ壊す」の小泉純一郎元首相で、早くから将来の総理・総裁候補として注目を集めてきた。総裁選第1回投票は国会議員票367票と党員・党友票367票の合計734票で争う。知己の選挙アナリストの分析によれば党員・党友票の現状は、報道各社の世論調査で「誰が次の首相に相応しいか」の問いに対して常に首位を争う小泉氏と石破茂元幹事長、そして高市早苗経済安全保障相、河野太郎デジタル相、茂木敏充幹事長らその他が4対3対3の拮抗状況にある。 それは367票の7割を小泉、石破両氏で獲得することを意味し、各々が146、110票の下駄(=基礎票)を履いて残る国会議員票367票を巡る戦いをすることだ。▶︎
▶︎しかし、1回目投票で過半数の368票に届くことはほぼない。つまり上位2人で実施の決選投票は、国会議員票367票と都道府県連票47票の計414票で争うのだ。当初、筆者はいの一番に総裁選立候補に名乗りを上げた小林鷹之前経済安全保障相が派閥横断の中堅・若手議員24人の同席を得て出馬会見をしたこともあり、好感を抱いた。
そして「世代交代」がキーワードでもある今般は小林氏(49)vs小泉氏(43)の“K・K戦争”になるとみた。月並みの言葉だが、政治の世界はそれほど甘くなかった。その24人中11人が、「政治とカネ」問題を再燃させた裏金疑惑の安倍派であることから、小林氏は難破寸前の安倍派「救命ボート」視されて、あっという間に失速した。筆者に人を見る目がなかったというよりも、これまで自民党政治を支えてきた「シニオリティシステム」(派閥優先・当選回数至上主義など)の残滓が依然として強く、それに弾き返された感じである。小泉氏の出馬表明が8月30日から9月6日に延期された。同陣営は台風10号の影響を口にしたようだが、事実ではない。
実は集めた国会議員の推薦人20人が、後ろ盾である菅義偉前首相の色が強すぎるのだ。そこで菅氏直系の「ガネーシャの会」だけでなく、二階派から2人、旧森山派から1人など新規開拓には時間がかかる。人気者にも“弱み”があるようだ。