9月27日午後、東京・永田町の自由民主党本部8階ホールで開かれた総裁選投開票の結果、第28代自民党総裁に石破茂元幹事長(67)が選出された。これまでに何度も自民党総裁選を取材してきたが、今回の1回目投票(国会議員367票、党員368票の計735票)と決選投票(議員368票と都道府県連47票の計415票)ほど、事前の票読みが難しかったことはなかった。すなわち、筆者を含め選挙予想の専門家や報道各社のベテラン政治記者の多くが読み誤った。
少々、お浚いをする。9月12日の総裁選告示前頃は、派閥の縛りがなくなり過去最多の立候補者9人の中で国民的人気が頭抜けた小泉進次郎元環境相(43)が最有力視されていた。だが、その2日後の14日に開かれた日本記者クラブ主催の公開討論会を経て不安視されていた同氏の「論戦力」欠如が徐々に明らかになった。失礼ながら一夜漬けで翌日のテストに臨んでも地道に勉強を重ねて本番を迎える強者に適うはずがない。その相手が高市早苗経済安全保障相(63)だった。想定外の党員票獲得第1位となり3位の小泉氏を大きくリードしたのも討論会で聴衆に力の差を見せつけたからだ。▶︎
▶︎15日間の選挙中にNHK日曜討論・討論会生中継、民放出演など計15回、その他に選挙管理委員会主催演説会6回、党本部での政策討論会3回などはネット中継された。選挙戦も終盤になると、決選投票を左右する議員票を巡って各陣営が仕掛ける情報戦も熾烈だった。
先ず指摘すべきは最終コーナーで競った石破、高市、小泉各氏に関する風評である。中でも最も真剣に受け止められたのは米欧の機関投資家から視た「3首相比較表」というものだ。そこには「石破首相:株安・金利下げ・円高、高市首相:株高・金利下げ・円安、小泉首相:株・金利・円ともに現状維持」と記述されていた。この評価からも市場関係者はアベノミクスの継承者を自任する高市氏待望論で沸いていた。事実、26日午前(米東部時間)のニューヨーク市場は円の金利低下のなか日本株が暴騰した。
しかし、政治は魔物であり、経済は生き物である。石破総裁誕生の裏面で激しい議員票争奪戦が展開された。新聞紙上に党員票の「引き剥がし」という言葉が躍ったことがそれを表している。そして10月1日に石破政権が誕生する。筆者の予想は、齋藤健官房長官・小泉幹事長で11月10日総選挙である。