そもそもは10月8日夜、BSフジの「プライムニュース」に出演した作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏が石破茂首相のクリスチャニティについて言及したことが発端だった。それまでは石破氏がプロテスタント長老派(プレスビテリアン)の信者であることは殆ど知られていなかった。正直いって筆者も同氏がクリスチャンであると承知していた。
だが、まさに目から鱗が落ちるであった。クリスチャン4代目の石破氏は母・和子さんが通った地元の日本基督教団鳥取教会で洗礼を受けた。慶應大学法学部進学直前の18歳だった。敬虔な信者である。佐藤氏は斬り込み名人キャスターの反町理氏と掛け合いよろしくその背景を詳しく説明した。以下はその概要である。明治8年11月、京都に同志社大学の前身である同志社英学校を創立した明治初期のクリスチャン教育者、新島襄の愛弟子で牧師・金森通倫は母方の曽祖父なのだ。祖父・金森太郎は徳島、山形両県の官撰知事を歴任。
一方の父方は、父・石破二朗が戦前の内務省官僚出身で戦後は旧建設省都市局長、官房長、事務次官を歴任し、鳥取県知事を経て参院議員に転出。祖父・市造は県内八頭郡大御門村議、村長を歴任したので石破氏は政治家3代目。父が田中角栄元首相に口説かれて政界に転出したことは永田町でよく知られたエピソードである(鈴木善幸政権で旧自治大臣)。石破氏も父の急死によって1983年1月に角栄氏の説得により旧三井銀行を辞めて木曜クラブ(旧田中派)事務局員に転職。そして86年7月総選挙で初当選から38年後の今年9月、衆院当選12回の石破氏は挑戦5回目にして自民党総裁の座を掌中に収めた。さらに第102代内閣総理大臣に上り詰めた。▶︎
▶︎これまで党内の非主流派であり続けたことから「党内野党」、「正論アウトサイダー」などと呼ばれ、今総裁選では主義・主張がブレるとして「前言撤回」、「有言不実行」と指弾された。
では、政治家・石破茂とはいったい何者なのか。筆者は「神のご加護を信じつつ、敬して止まない角栄的なリアリスト」と評したい。佐藤氏は石破氏をプロテスタント長老派としたが、カルヴァン派説もある。16世紀の神学者ジャン・カルヴァンは「宗教」と「政治」改革を実践した。その教えは、神から与えられ現世の職業に誠実であれ、である。改革志向のリアリストは全てに許されるのだ。世上の「常識」からすれば無理筋の「日米地位協定」見直しも「アジア版NATO」構想も石破氏には必ずや神に祝福される政治課題なのだろうか。