政治の世界で「今にして思えば……」ということがよくある。10月27日の総選挙で敗北した自民、公明両党は衆院過半数割れとなり、国民民主党との「部分連合」の成否が石破茂政権の命綱となった感が強い。想起されるのは同9日午後の衆院本会議で解散する直前に参院第1委員会室で行われた国家基本政策委員会合同審査会(党首討論)である。衆院解散当日の党首討論も異例だが、受けて立つ石破首相は自信があったのか通例の45間分を80分間に延長した。演台上には想定問答集など一切置かずに臨んだ。
それ故なのか、国民民主の玉木雄一郎代表が「選挙に関して1円も政策活動費を使わないと明言して欲しい」と質すと、石破氏は「現在認められており使うことはある」と答弁。誘導質問に乗せられたのである。首相から一本取ったのだ。それは措く。本論は別にある。NHK中継を観ていた某全国紙記者の目に留まったシーンが実に興味深い。▶︎
▶︎以下は、同記者から聞いた話の再現だ。質問を終えた玉木代表を榛葉賀津也幹事長が会場の隅で迎えた。次いでどこから現れたのか、自民の小泉進次郎選対委員長(当時)が近づいた。
しかも周辺の目を気にしながら榛葉氏と話し込む。時間は5分足らず。今にして思えば、あの頃から自民、国民両党の水面下での「接触」が始まったのかもしれないと、件の記者は言う。キーマンは、先週、小泉氏後任の選対委員長に就いた木原誠二氏である。昨年4月、日本生産性本部に事務局を置く令和国民会議(令和臨調)主導で発足した「日本社会と民主主義の持続可能性を考える超党派会議」の中核メンバーは木原氏だ。令和臨調との対話・交流を通じ、党派を超えた勉強会が主たる活動内容である。自民党、立憲民主党、公明党、日本維新の会、国民民主党から85人が参加。各党の代表世話人は以下の通り。
自民:小渕優子組織運動本部長(衆院当選9回)、立民:大島敦企業・団体交流委員長(9回)、公明:伊藤渉前団体渉外委員長(5回=今総選挙で落選)、維新:藤田文武幹事長(3回)、国民民主:古川元久国対委員長(10回)。自民メンバーの古川禎久元法相(8回・国交省OB)と財務省OBの古川元久氏は党派を超えた刎頸の友だ。木原氏は玉木代表と旧大蔵省入省同期。立民メンバーの大串博志選対委員長(7回)も財務省出身だ。石破政権が傾注する国民民主との「部分連合」の成否を決めるのは令和臨調の財務省人脈である。