来年1月20日発足の第2次トランプ政権を表すネーミングに迷う。「トランプ王朝」ではありきたりだし、「フロリダ・マフィア」は核心を突くが新鮮味に欠ける。 それにしても、である。先週、ドナルド・トランプ次期大統領自らが発表した人事には驚いた。
というよりも、「そこまでやるのかよ」と呆れ果てたというのが、正直な感想である。仰天第1ラウンドは国防長官人事だった。筆者も訪れたことがある五角形の巨大な建造物・国防総省(ペンタゴン)は130万の現役部隊と75万の文民職員を擁する世界最大の政府官庁だ。そのトップに指名されたピート・ヘグセス氏(44歳)は、超保守メディアFOXのニュース司会者。軍歴があると報じられたが、厳密に言えば陸軍ミネソタ州兵予備役(少佐)である。アフガン戦争時に首都カブールの反乱鎮圧訓練センターで教官をした。イラク駐留歴もあるが、海外従軍歴はない。
それにしても、これまで政府要職や軍幹部の経験がない同氏は世界中に展開する米軍を指揮する立場に相応しくないと声が上がる。米国の口さがない政界雀は「司会者上がりに軍統治などできるはずがない」と断じる。▶︎
▶︎驚きの第2ランウンドは司法長官。指名されたのはマット・ゲーツ下院議員(フロリダ州選出・42歳)。こちらも開いた口が塞がらぬだ。超保守の同氏はかつて未成年少女へのわいせつ行為や薬物使用疑惑で同省の捜査対象となった。
要は、トランプ氏が大統領選挙期間中に自らを起訴した司法省への「報復」を宣言しており、政敵報復戦線の司令官にゲーツ氏を充てるということだろう。人事権を持つ長官として乗り込む同氏が、組織再編などを理由に同省に嫌がらせを行うのは自明だ。次は少々前向きに、ホワイトハウスの統治体制や新政権の主要政策に関わる人事に目を転じる。肝の人事は次期大統領首席補佐官のスージー・ワイルズ氏(67)。「猛獣使い」の異名を取る同女史にはボスも一目を置く。外交・安保政策を率いる国務長官のマルコ・ルビオ上院議員(53)と大統領補佐官(国家安全保障担当)のマイケル・ウォルツ下院議員(50)の両氏は共に筋金入りの対中強硬派で知られる。
さらにルビオ、ウォルツ両氏はフロリダ州生まれで、ワイルズ氏は同州で政治キャリアを積んだ。そしてこの4年間に保守化した同州政府から多くの人材がワシントンに流出し、新政権入りする。まさにフロリダ・マフィアが蝟集するのだ。