国内外からの石破茂政権に対する評判が捗々しくない。というよりも石破自身に疑問符が付けられている。
肩にのしかかる疲労だけがお土産となる傷心の外交デビューだった11月の南米2カ国訪問。同15~16日にペルーの首都リマで開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に出席した際の「外交マナー」が新聞で問題視され,SNS上では「頼むから礼儀作法を勉強してくれ」などと炎上したのは記憶に新しい。15日午前10時30分からリマ・コンベンション・センターで開かれた首脳会議の直前にカナダのジャスティン・トルドー首相やマレーシアのアンワル・イブラヒム首相が挨拶のため石破のもとを訪れたが,石破は自席に座ったまま握手を交わした。その写真が拡散した。歓迎行事でも各国首脳同士が歓談する中でやはり自席でスマートフォンを操作する姿が報じられた。国際会議での各国首脳同士の挨拶は外交プロトコル(儀礼)に従う。石破本人も「拙かったな」と自覚したからこそ,12月3日午後の衆院本会議代表質問で小川淳也立憲民主党幹事長の指摘を受けて「私自身,足らざる部分が多々あったと認識している。謙虚に真摯に受け止め,改善に努めなければならないと痛感している」と答弁したのだろう。石破に悪気があったわけではない。自ら立ち上がって握手に応じるべきだと気が付かなかったのだ。▶︎
▶︎そもそも「気が付かない人」である。永田町・霞が関界隈では何事につけ「気遣いしない人」,「気配りとは無縁な人」として周知されている。石破は自分の人間性に関わる問題を抱えるだけでなく,どうやら政府・与党の統治力についても疑問符が付くようだ。弊誌前号(11月25日号)で「首相官邸の秘事『赤澤案件』とは?」は政・官界で話題となった。「主要政策決定過程に一閣僚の矩を踰えて関与する」と報じたのが気に食わなかったのか,当該の赤澤亮正経済再生相は一瞥して「くだらない事を書いている」と言い放ったという。政策決定プロセスが不透明であり,法的を含む責任の所在が明確ではないことは,事例を挙げて説明できる。現在の石破官邸は“総務官僚官邸”である。フェアに言って,佐藤文俊官房副長官(事務)が何とか下支えしているのは事実だ。それも措く。12月20日頃の2024年度補正予算成立の成否のカギを握るのは「103万円の壁」見直しに拘る国民民主党(玉木雄一郎代表)側と折衝する自民党税制調査会(会長・宮澤洋一元経産相)である。
だが,来年1月召集の通常国会に正念場を迎える石破政権の一大事である同交渉に石破の意向は全く反映していない。ここでも自民党税調インナーに顧問で残った森山裕幹事長に丸投げしている。11月に税調インナー入りした齋藤健前経産相や小林鷹之元経済安全保障相も頭越しのようだ…(以下は本誌掲載)申込はこちら