来るべきものが来たということだろう。ドナルド・トランプ次期米大統領の主要閣僚級“最後っ屁”人事のことである。
トランプ氏は12月4日、大統領上級顧問(貿易・製造業担当)に第1次政権の国家通商会議(NTC。後に通商製造業政策局に改編)委員長だったピーター・ナバロ氏を指名した。第1次政権発足直後の米中貿易戦争を仕掛けた張本人だ。議会侮辱罪で有罪判決を受けて本年7月まで刑務所に服役していた強者でもある。この人事が対中強硬派の結集の最後を飾ることになる。国務長官:ルビオ上院議員(フロリダ州選出。キューバ系米国人で親イスラエルでもある)、大統領補佐官(国家安全保障担当):ウォルツ下院議員(フロリダ州選出・陸軍特殊部隊員としてイラク戦争などに従軍=退役州兵大佐)、米通商代表部(USTR)代表:グリア元代表部首席補佐官(国際貿易法を専門とする対中タカ派弁護士)らの揃い踏みだ。▶︎
▶︎第2次政権の主要政策は、概ね①減税②関税③移民④FRB(連邦準備制度理事会)の独立性―の四本柱から成る。取り分け、「Tariff Man(関税男)」を自任するトランプ氏は関税問題に執着している。具体的には公約として全輸入品を対象に10~20%の関税賦課、中国からの輸入品に一律60%の関税賦課を言明した。来年1月20日の大統領就任初日にメキシコ、カナダ、中国からの全ての輸入品に対する追加関税賦課も表明(各々+25%、+25%、+10%)。他にもBRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカなど主要新興国9カ国)が米ドルの代替通貨を支援した場合、各国からの全ての輸入品に100%関税賦課を発表している。
要は、トランプ氏が中国とのディール(取引)で「関税」が最大の武器になると分かっていることを意味する。換言すれば、米中貿易戦争2.0を仕掛ける腹積りである。それ故にナバロ氏を改めてホワイトハウス西棟2階の角部屋に招請した。中国の習近平指導部も素早い対応を見せた。9日、共産党中央政治局会議が開かれ、財政出動と金融緩和の拡充を決定。10年ぶりの緩和政策はトランプ強硬路線を強く意識したものだ。そこへ飛び込んで来たのが11日の米CBS報道「1月20日の大統領就任式に習氏を招待した」である。仰天した。米国務省の記録では、1874年以来、米大統領就任式に外国の首脳が出席したことはない。だが、米中は裏で握っている可能性がある?の疑念が頭をよぎったのは筆者だけではあるまい。