12月22日(日曜日)午前、石破茂首相は東京・富士見の日本基督教団富士見町教会で行われたクリスマス礼拝に参加した。「首相動静」で石破氏がプロテスタントのクリスチャンであることを知った方もおられよう。石破氏は慶應義塾高校3年生時に地元鳥取県の日本基督教団鳥取教会で洗礼を受けている。宗派はプロテスタント長老派である。現職の首相がクリスマス礼拝に参加するのは極めて異例だ。筆者が承知する限りでは、過去1回だけである。永田町では麻生太郎元首相(現自民党最高顧問)がカトリック教徒であることは周知の事実。2008年12月24日夜、当時の麻生首相は東京・関口のカトリック教会「東京カテドラル聖マリア大聖堂」におけるクリスマスイブのミサに家族とともに参列した。記憶が正しければ、首相が亡くなったキリスト教徒の追悼ミサ参列はあったはずだ。調べてみた。この20年弱で2回ある。麻生首相が2009年6月6日午後、上述の東京カテドラル聖マリア大聖堂で親族の追悼ミサに参列。安倍晋三首相(当時)は2017年5月30日午後、東京・麹町の「カトリック麹町聖イグナチオ教会」で故渡部昇一氏の追悼ミサに参列――とそれぞれ「首相動静」に記述されていた。
この検索で改めて気付かされた事がある。それは故安倍氏の日程である。官邸での午前8時6分からのIT総合戦略本部・官民データ活用推進戦略会議合同会議、閣議、TPP関係閣僚会議、10時14分から参院法務委員会、途中退席し官邸で11時57分から午後1時4分まで麻生副総理兼財務相(昼食は「紀尾井なだ万」の宅配弁当)、同午後はソーンベリー米下院軍事委員長ら表敬、防衛省での南スーダン派遣施設隊連隊旗返還式出席、官邸で3時23分から谷内正太郎国家安全保障局長、秋葉剛男外務審議官、47分岸田文雄外相、未来投資会議、韓国の文在寅大統領と電話会談、そして午後6時47分から南麻布の「有栖川清水」で葛西敬之JR東海名誉会長、古森重隆富士フイルムHD会長と会食。
なぜ、この安倍氏日程を紹介したのか。当然ながら、理由がある。先に結論を言う。発足して間もない「石破官邸」であり、単純に比較するのはアンフェア(不公正)であるが、「官邸力」を「安倍官邸」時代と見比べるとその差が余りにも大き過ぎて、言葉を失う。▶︎
▶︎では、なぜ見比べたのか。今度は石破氏の12月15日(日曜日)の「首相動静」。同日は午前に地方新聞向け対談企画を終えた後、午後2時に公邸に入り、同2時3分から3時12分まで加藤勝信財務相、新川浩嗣財務次官、宇波弘貴主計局長、青木孝徳主税局長、3時20分から5時41分まで青木一彦官房副長官、そして同53分に衆院議員赤坂宿舎に戻る――。
その後の石破氏の動静は不明である。 筆者の耳に届いた情報によると、概ね次のような光景が散見できたというのだ。午後6時半過ぎから赤坂宿舎内の食堂で石破氏は最側近の赤澤亮正経済財政・再生相と2人で、近くのコンビニで売っているような真空パック入りのスルメイカ、ポテトチップスなどをつまみにしてテーブルに置いた日本酒(4合瓶)をグラスで飲みながら談笑していた。内閣総理大臣と内閣府特命担当大臣(7政策担当)がコップ酒で謀議を図る――これが事実ならば何とも侘しいシーンではないか。
皮肉にも暦上は同じ15日夕(米東部時間・日本時間16日午前)、安倍昭恵さんは米フロリダ州のドナルド・トランプ次期大統領の別荘「マーラ・ラゴ」で催されたトランプ氏夫妻主催の夕食会に招かれた。そこには「(今や話題集中の)イーロン・マスクさんだけでなく次期政権の主要閣僚が数人同席しました」と、昭恵さんが22日に東京・市ヶ谷で開かれた「日本李登輝友の会『日台共栄の夕べ』」の席で知人に語っている。彼の地で昭恵さんが舌鼓を打った夕食会のメイン料理は、ドイツ系米国人には最高のもてなしミートローフだった。トランプ氏の祖父母はドイツからの移民である。当然、メラニア夫人の手料理ではなくマーラ・ラゴの専属シェフの手に成るものだ。
いずれにしても、石破氏を巡る様々なエピソードには「格差」がにじみ出ているのだが、ご本人はなぜだが政権運営に自信を抱き、来年の第217回通常国会を乗り切って自らが7月参院選の先頭に立つ腹積りであるという(たとえ衆参ダブル選挙であっても)。俄かに信じ難いことだが、同氏の心象風景では石破政権が当分間存続するようなのだ。