12月23日夕,麻生太郎元首相(現自民党最高顧問)危篤説が永田町を駆け巡った。同夜には警視庁公安部情報として「麻生さんは肺炎が悪化して咳が止まらない状況。ガクッと行く可能性がある」が流れた。それだけではない。志公会(麻生派)議員秘書からも「麻生さん,極めて体調悪し」「地元の飯塚麻生病院に入院」情報がもたらされた。
だが,麻生は翌24日午後,石破茂首相と国会内で約30分間面会し,ガセネタだったことを自ら証明した。確かに,麻生は12日の派閥会合で「オレは肺炎になった。咳が止まらなかった」と語っていた。看過すべきではないのはこの時期になぜ誰が「麻生危篤」説を流したのか,その意図である。当然ながら,少数与党の石破政権の存続に赤信号が灯るようになったことと無関係ではない。石破後継を巡り鞘当てが始まり,早くもディスインフォ―メーションなのか。
確証はない。「年収103万円の壁」引き上げを巡る自民,公明の与党と国民民主党の交渉は右往左往して着地点が定まらない。国民民主代表の役職停止中の玉木雄一郎が「見切り発車すれば来年度予算案に賛成できない」と息巻く。慌てた与党は20日,自・公・国3党幹事長会談で協議の継続を確認する。先の総選挙で4倍増になったとはいえ28議席に過ぎない中小政党の国民民主が,直近のマスコミ各社の世論調査で軒並み政党支持率を延ばしている。議席では野党第1党の立憲民主党を初めて上回り野党トップに躍り出た。「103万の壁」見直し問題は石破政権の延命と連動しており,年末から年明けの政局の焦点に浮上した。▶︎
▶︎石破官邸は国民民主を怒らせないように顔色を窺いながら政権運営せざるを得ない状態だ。17日の3党税調会長協議で,国民の古川元久会長は自公が提示していた「123万円」から進展がなかったとして「協議打ち切り」を通告,10分で退室した。その後,古川は党会合で「自公はやる気がないと判断せざるを得ない」と述べ,25年度予算案にも「当然,賛成できない」と石破政権を牽制する。
そもそもこれに先立つ11日の3党幹事長会談では国民の主張「178万円を目指して来年から実施する」との合意が交わされていた。この合意に自民の宮澤洋一税調会長は「正直ビックリした。釈然としない」と不快感を示す。「自民1強」の頃,税制改正は自民税調の「聖域」だった。取り分け,故山中貞則会長時代は「時の首相(総裁)も口を挟めない」領域だった。極少数の税調幹部(インナー)が密室協議で予め落としどころを決め,総会は議員が勝手に意見を吐く「ガス抜きの場」だった。ところが,官邸主導の時代が到来すると,首相の指示で党内の異論を抑え込んだ。2015年の消費税の軽減税率導入では,当時の安倍晋三首相が官邸の方針と対立した野田毅税調会長を更迭する…(以下は本誌掲載)申込はこちら