第217回通常国会は1月24日に召集された。国会審議で与野党攻防の主戦場とされる衆参院予算委員会も当初予定通り30日に始まる。だが石破茂首相は今、2025年度予算の年度内成立をめぐる与野党協議の先行きより優先する2つの重要案件で、頭の中がパンク寸前にある。
一つは2月の訪米。7日夜にワシントンに向けて発ち、11日午前帰国の強行軍だ。念願のトランプ大統領とホワイトハウス(WH)で会談する。石破氏が故安倍晋三元首相を強く意識していることは永田町では周知の事実である。その安倍氏はトランプ氏と延べ15回21時間40分も会談している(就任前の16年11月会談を含む)。初会談の石破氏とは彼我の差である。安倍氏と張り合うこと自体ナンセンスだが、「安倍さんは安倍さんのやり方があり、自分は自分なりにやっていきたい」と語っている(12月の読売新聞インタビュー)。そんなに力む必要があるのか、と申し上げたい。▶︎
▶︎ご自身はプロテスタント長老派(プレスビテリアン)の熱心な信者で、18歳で洗礼を受けている。一方のトランプ氏も自称プロテスタントである。大統領就任式前、WH近くの教会に立ち寄った。敬虔なクリスチャンであるのかに疑問符が付くが、石破氏は滞在中の日曜礼拝の同席を探っているようだ。それは措く。二つ目の案件は夏の参院選である。こちらにも力が入っているようなのだ。
まず、来る参院選の注目すべきポイントを挙げる。24年の10月総選挙で敗北した自民、公明両党は少数与党を余儀なくされた。参院(定数248議席)の過半数は125議席である。自民党は22年夏の参院選の貯金が効いているので比例+選挙区合わせての非改選は61議席。同様に公明党は13議席(比例6+選挙区7)あり、自公合わせて74議席ある。従って、与党(自公)で51議席獲得すれば、非改選74議席を加えると125議席=過半数に届く。
少々踏み込む。公明が改選14議席(比例7+選挙区7)を比例1減の6議席、選挙区増減0の7議席(埼玉、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫、福岡)の13議席獲得を前提とすると、自民は38議席で与党51議席となる。平たく言えば、自民は現職52人が再選を目指し、最悪38人当選で過半数維持だ。ハードルは必ずしも高くない。そこで石破氏は「大負けしなければ勝ちと同じ」と自らを鼓舞し、38議席クリアのため力むのだ。信じれば救われるのだろうか――。 永年のご愛読、心より御礼申し上げます。